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(A side)
『夢って、何?』
ゆうやさんにそう聴かれて、気づいた。
私の夢って、なんだろう…。
F64:僕は、小学1年生から野球をしていた。だから、プロ野球の選手になるのは、夢だった。
プロ野球選手になっても夢は持った。1軍で活躍したい、札幌ドームでヒーローになりたい、優勝したい、日本一になりたい、遥輝みたいにタイトル取りたい…って。
Aは、小さな頃の夢って覚えてる?
…小さな頃の、私の夢…。
A:…郵便局員さん、かな。
以前住んでいた家の向かい側に、小さな郵便局があって。お手伝いをして…肩たたきとかのレベルですよ?お小遣いをもらったら、自分の通帳を持って「これ貯金お願いします!」って、ひとりで行くんです。局員さんが動かす機械を見て「機械の中でジージー言ってるね」とか言って…。ニコニコしていた思い出があります。
まともに字の書けない幼稚園児が、50円や100円持って、週1回とか行くんですよ?局員さんも忙しいのに、必要な書類も書いてくれて。こんな局員さんになりたいなって、小学生の頃思ってました。
F64:ふふっ。Aって、そんな頃から可愛い事してたんだね。僕なんか、100円あったら駄菓子屋行ったり、ジュースとか買ってすぐに使ってしまってたなぁ…。
A:でも、見えなくなってから、夢…考えたことなかったかも…。
中学卒業までの1年半は、点字を覚えるのに必死で。内容のわかっている絵本から始めて、私が3年生の時には、小学1年生の、みどり君の教科書を点字にしてもらって、それを一緒になって読んだりしていました。
高校、大学といったけど、自分が入れる学校を、まわりの人が選んだだけで、特別何かを勉強したかった訳じゃない…って、最近になって気づいたんです。
F64:今は、勉強したい事がある?
A:ゆうやさんの、助けになることを学びたいです。アスリートフードマイスターとか…。でも見えない私にはできなくて…。だから…ゆうやさんの為にできることが何もなくて…。
そこまで言うと、ゆうやさんが私の左手を、ぎゅっと握った。
F64:Aが僕の為にできること、たくさんある。
いつでも笑っていて。綺麗な声で応援して。楽しい話を聞かせて。そして、僕は毎日一緒にいたい。ほら、いっぱいあるでしょ?
A:…でも…。
F64:今のAに必要な事って、夢を見つける事じゃないかな。
これからの進路は、それを見つけてからでも遅くないから。
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作者名:梨瑠(Riru) | 作成日時:2018年1月22日 13時