検索窓
今日:12 hit、昨日:28 hit、合計:53,350 hit

5 ページ6

(A side)


『夢って、何?』

ゆうやさんにそう聴かれて、気づいた。
私の夢って、なんだろう…。



F64:僕は、小学1年生から野球をしていた。だから、プロ野球の選手になるのは、夢だった。
 プロ野球選手になっても夢は持った。1軍で活躍したい、札幌ドームでヒーローになりたい、優勝したい、日本一になりたい、遥輝みたいにタイトル取りたい…って。
 Aは、小さな頃の夢って覚えてる?


…小さな頃の、私の夢…。


A:…郵便局員さん、かな。
 以前住んでいた家の向かい側に、小さな郵便局があって。お手伝いをして…肩たたきとかのレベルですよ?お小遣いをもらったら、自分の通帳を持って「これ貯金お願いします!」って、ひとりで行くんです。局員さんが動かす機械を見て「機械の中でジージー言ってるね」とか言って…。ニコニコしていた思い出があります。
 まともに字の書けない幼稚園児が、50円や100円持って、週1回とか行くんですよ?局員さんも忙しいのに、必要な書類も書いてくれて。こんな局員さんになりたいなって、小学生の頃思ってました。

F64:ふふっ。Aって、そんな頃から可愛い事してたんだね。僕なんか、100円あったら駄菓子屋行ったり、ジュースとか買ってすぐに使ってしまってたなぁ…。

A:でも、見えなくなってから、夢…考えたことなかったかも…。
 中学卒業までの1年半は、点字を覚えるのに必死で。内容のわかっている絵本から始めて、私が3年生の時には、小学1年生の、みどり君の教科書を点字にしてもらって、それを一緒になって読んだりしていました。
 高校、大学といったけど、自分が入れる学校を、まわりの人が選んだだけで、特別何かを勉強したかった訳じゃない…って、最近になって気づいたんです。

F64:今は、勉強したい事がある?

A:ゆうやさんの、助けになることを学びたいです。アスリートフードマイスターとか…。でも見えない私にはできなくて…。だから…ゆうやさんの為にできることが何もなくて…。


そこまで言うと、ゆうやさんが私の左手を、ぎゅっと握った。


F64:Aが僕の為にできること、たくさんある。
 いつでも笑っていて。綺麗な声で応援して。楽しい話を聞かせて。そして、僕は毎日一緒にいたい。ほら、いっぱいあるでしょ?

A:…でも…。

F64:今のAに必要な事って、夢を見つける事じゃないかな。
 これからの進路は、それを見つけてからでも遅くないから。
 

6 &作者より小コメント→←4



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (19 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
39人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:梨瑠(Riru) | 作成日時:2018年1月22日 13時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。