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結城:はい。
目が見えるようになっても、別の障害が出る可能性は、ゼロではありません。手足が震えたり動かなくなるといった身体障害、記憶障害、味覚障害、嗅覚障害。色だけが戻らない事、死に至る失敗例も過去にはあります。
A:記憶?今までの事を全部忘れてしまうの?
結城:必ず記憶障害が出る訳ではない。その記憶障害だって、全部を忘れる事もあるけれど、断片的な事も。子供の頃を覚えていない人もいるし、直近の1年だけ忘れてしまう人もいる。
次に、アメリカでの滞在期間が、手術前の本格的な検査に3ヶ月、手術を経過観察をしながら最低2回、術後の回復期間もいれると約1年。その間Aちゃんは病院に入院し、手術後は数か月、窓もない無菌室に入ります。これは、自然が大好きなAちゃんには辛い事だと思います。
ご家族の付き添いも必要となるでしょう。また、最初の検査段階で手術不適合だと判断される可能性も、ゼロではありません。
結衣:家族の付き添い…。
結城:最後に費用面です。アメリカへの渡航費、入院、手術、家族の長期滞在する場所の確保、通訳費用等々を考えると、1〜2億、最大で3億程度必要になるかと思います。
日本のように、健康保険の概念がないため、医療費はどうしても高くなってしまうのです。
外国で手術を受けたいので募金活動をする、という専門の団体もあります。ですが、Aちゃんは手術をしなくても生きられるので、優先順位が下になります。
母:そうですね。Aは目が見えないだけで、元気に生活していますね。
結城:ここからは、私の個人的な意見です。
見える方法があるならば、受けさせてあげたいと思っています。私もこの症例の解決策を学ぶために、一緒に渡米したいと思っています。
Aちゃんのように、原因不明で突然見えなくなる子も救いたい。それが日本で解決できるならば…という思いは、日本の医療機関共通で思っている事です。
大学の上層部や他の機関にも、費用補助が得られるかを打診しています。結論が出るまでしばらくかかりますが、ご理解お願いします。
私からの報告は以上になります。ご家族で納得の行くまで、お話をしてください。
Aちゃん、今日これから退院してもいいよ。
母:ありがとうございます。A、帰ってゆっくり考えましょう。
A:うん。先生、お世話になりました。手術の事、どうしたらいいのか考えるので、時間下さい。
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作者名:梨瑠(Riru) | 作成日時:2018年1月22日 13時