14 ページ14
SideA
朝昼晩とみっちゃんとご飯を食べるようになって一週間ほど経ったある日。
私は天ぷら油とにらめっこしていた。
「そろそろ帰ってくる頃やと思うんやけどなぁ…。」
時計を見上げれば、みっちゃんがいつも帰ってくる時間を少し過ぎたところ。
天ぷらは揚げたてじゃないとおいしくないから、みっちゃんが帰ってこないことには夕食の準備が進まない。
こんな日に限ってどっかでつかまってるんやろうか？
まさか、お客さんのところで一杯ごちそうになってたりしてないよね…？！
「…ありうる…！」
まあまあ上がり！なんて言われたらほいほい上がって晩御飯までごちそうになっちゃうタイプやからなぁ。
「どこで油売りよるんよ…！」
もう！ほんっとフラフラしとるんやから！
せっかくピチピチ音がしてる油の火を切って、店へと続く扉を開けた瞬間やった。
「わっ？！」
「ぎゃっ？！」
え？！今何かいた？！
まだドキドキ言ってる心臓を押さえながら、そっと身を乗り出す。
一升瓶が並んだ棚の間から小さな帽子がちらっと見えた。
子ども？酒屋に？
「…えっと…おつかい？」
「っ！」
おずおずと棚の影から出てきたのは幼稚園園児くらいの小さな男の子だった。
「その…ごめんね、店の人おらんけん気づかんくって…えっと、何がいるん？」
「…。」
あれ？どしたんかな？
男の子は黙って下を向いて地面を見つめ続けている。
「…お酒の名前、わかる？」
「…。」
…困った。
お酒の名前がわかれば売ることもできるけど、それもわからないんならお手上げや。
そもそも、子どもって苦手なんよなぁ〜。どう接していいかわからんし。
う〜ん…どうしようかなぁ…。
あ！そうや！
「ねえ、お父さんの名前わかる？お姉ちゃんに教えてくれん？」
名前さえわかればみっちゃんならどのお酒を届ければいいかわかるはずやし！
「…ん…。」
「へ？」
しゃがみこんで耳を近づけると、男の子は下を向いたままぶっきらぼうに言った。
「知らん。」
「知らんって…そんなことなかろうもん。」
最近の子どもはひねくれてるって聞くけど、こげな小さい子まで大人にこんな口きくわけ？
「別に怒りようわけやないんやけん、お父さんの名前を」
「知らんもんは知らん。」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 14人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
☆kon☆(プロフ) - 蒲公英さん» コメントありがとうございます！嬉しいお言葉の数々に泣きそうです(/ω＼)まだまだワクワクドキドキして頂けるよう頑張りますので、変わらず応援して頂けると嬉しいです！！ (2020年7月18日 23時) (
レス) id: 8e45766978 (このIDを非表示/違反報告)
蒲公英(プロフ) - いつもお話を楽しみにしております！夢主ちゃんと一緒になって笑ったりどきどきしたりはらはらしたりして、とっても大好きなお話です！いつもありがとうございます！これからも応援しています！これからどうなっていくのかとってもわくわくです！ (2020年7月18日 18時) (レス) id: 82e4cd4c6f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：kon | 作成日時：2019年7月13日 10時
