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SideA
一体全体どうしたもんか…。
岡崎酒店への道すがら私は何度も立ち止まったり、引き返したりやっぱり進んでみたりを繰り返していた。
大の大人がブツブツ言いながら道を行ったり来たりしてるなんてかなり怪しい。
そんなことわかってるけど、どうしたらいいかわからんのやもん！
「…でも、返さんわけにいかんしなぁ…」
紙袋にいれたエプロンがぷらぷらと手の中で揺れる。
東京に送る荷物を整理してたら出て来たエプロン。
ただのエプロンなら捨ててしまうけど、こればっかりはそういうわけにいかない。
…わかんないんよなぁ。
どうしてこんな大切なもの私にくれたんやろう？
私はあんな風に突き放すくらいの存在でしかなかったのに…。
「あーもー！やめやめ！」
どうせ考えても答えなんか出ないんやもん！
サッと返してササッと帰る！これで終わり！
「よしっ！」
気合を入れて岡崎酒店へと歩き出した。
「…何で…！」
何でおらんとー？！
意を決してやってきた岡崎酒店は呼べど待てど人の気配はなく…。
せっかく人が緊張しながら来たっていうんに！
「…何なんよもう…」
何だか力が抜けてしまって上がり框に腰かけた。
相変わらず整理整頓されてない棚、古いつっかけ、積みあがった新聞。
埃をかぶったカウンター。
陽気な声に満ちたあの日々がまるで何十年も昔みたいに遠く感じる。
私、本当にここに住んでたんやろうか？
ここで角打ちやらやりよったんやろうか？
本当は全部幻やったんやないんかな？
途端に、じわりと滲む視界。
「…っ…」
あぁー！もう！泣くつもりなんかないのに！
私ってば変化を前にナイーブになってるんかな？！
「もう！いい年した大人なんに…！」
サッと涙をぬぐって深く息を吸う。
みっちゃんには言いたいこといっぱいあるし、聞きたいこともいっぱいある。
未だに怒ってることだってあるし、悲しかったこととか寂しい気持ちだってぶつけてやりたい。
でもね、それだけやないよ？
この涙はそんな冷たい涙やないんよ。
ここでみんなと過ごした時間があまりにも楽しくって、きらきらしてて、懐かしくて…
もう戻らないそんな大切な時間が愛しくてたまらんのんよ。
「…さよなら」
エプロンの入った紙袋を上がり框に置いて少しだけ微笑んだ。
私ね、ここが…みっちゃんが大好きやったんよ。
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☆kon☆(プロフ) - 蒲公英さん» いつもコメントをありがとうございます！こんなしがない小説を楽しんでいただき、また嬉しい感想まで本当にありがとうございます(*^▽^*)きっと絶叫はあのシーンでしょう（笑）一生懸命更新していきますので、今後もお付き合いいただけると嬉しいです☆ (2021年1月3日 23時) (
レス) id: 8e45766978 (このIDを非表示/違反報告)
蒲公英(プロフ) - いつも素敵なお話を本当にありがとうございます！涙したり、嬉しくなったり、絶叫したり…どきどきわくわくが止まらず、とっても楽しいです！あの御方達がゲストで登場だなんて！素敵さがますます加速していくお話にこれからも目が離せません！大好きです！ (2021年1月2日 22時) (レス) id: 82e4cd4c6f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：kon | 作成日時：2020年12月31日 0時
