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SideA
思わず上げた視線はひろ兄の大きな瞳に吸い込まれていった。
「俺、結婚するってなったらもちろん働くばい。きちんと跡継いで店も展開していきたいって思ってる。お茶を使ったスイーツとか考えてさ、ゆくゆくはカフェをやったら楽しそうやない？」
淀みなく語るひろ兄の未来には私が一緒にいる。
ひろ兄と一緒に暮らして、ひろ兄と一緒に歳をとって…
「理由が必要なら、俺を理由にしたらよかよ。」
「…え？」
「Aちゃんが福岡に残るのは俺と結婚するから。俺が引きとめたから。それでいいやん？」
それで…いいんやろうか？
「Aちゃんがほしいものは何でもあげたいとよ。」
わかってる。
ひろ兄はいつでも何でも与えてくれた。
居場所も、理由も、勇気も元気も。
「あんたが側におってくれたら他に何もいらん。」
そっと…壊れ物でも扱うようにひろ兄の指が頬に触れる。
大きな掌に促されるようにひろ兄と向き合えば、切ないほど真っ直ぐな瞳と視線がぶつかった。
ゆっくり、ゆっくり近づく大きな瞳。
ひろ兄、手が震えてる。
なんて冷静に考えてる自分に少し驚きや。
だって、目の前で起きてることなのにまるで映画みたいなんやもん。
頬に触れる手はあったかくって、大きくて、なんだか全て包みこまれてるようで心地良くて…
そっと瞳を閉じた…その時だった。
『Aちゃん！おかわり！』
「っ！」
まるで閃光みたいに脳裏を走ったのはお茶碗を持って笑うみっちゃん。
『うまか〜！』って焼酎を飲む満足そうな顔、つまみ食いが見つかって慌ててごまかす声、けんたとおやつを奪い合う姿…
『あんたの帰る家はうちたい！』
河原で言ってくれた言葉。
「〜っ！」
気がついたらひろ兄の胸に手をついていた。
「…Aちゃん…？」
「…ごめっ…ごめん…な、さいっ…私っ…」
自分でもわけがわからなくて逃げるように視線を落とした。
「…私っ…！」
下を向いた世界が歪んで、胸の奥からせりあがる気持ちが熱い雫になる。
違う。この手じゃない。
この唇じゃない。この声じゃない。この瞳じゃない。
どれもこれもみっちゃんじゃない。
「…俺じゃいかんと？」
「っ…！ごめんっ…」
細く長く息を吐いて、ひろ兄は体を離した。
観覧車を降りて駅に着くまで、ひろ兄は手を繋がなかったし頭も撫でなかった。
『ひろ兄』って呼んでも何も言わなかった。
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☆kon☆(プロフ) - 蒲公英さん» いつもコメントをありがとうございます！こんなしがない小説を楽しんでいただき、また嬉しい感想まで本当にありがとうございます(*^▽^*)きっと絶叫はあのシーンでしょう（笑）一生懸命更新していきますので、今後もお付き合いいただけると嬉しいです☆ (2021年1月3日 23時) (
レス) id: 8e45766978 (このIDを非表示/違反報告)
蒲公英(プロフ) - いつも素敵なお話を本当にありがとうございます！涙したり、嬉しくなったり、絶叫したり…どきどきわくわくが止まらず、とっても楽しいです！あの御方達がゲストで登場だなんて！素敵さがますます加速していくお話にこれからも目が離せません！大好きです！ (2021年1月2日 22時) (レス) id: 82e4cd4c6f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：kon | 作成日時：2020年12月31日 0時
