【実況者】この歌は君に向けて *Inevitable*

第82話 つわはすside ページ37

「よろしく、蓮さんっ」

「お、おう…」


笑顔で俺の元に駆け寄ってきたのはAさん
マジか…マジかぁ……
女性の前で、情けない姿を見せるのは流石に…


「Aさんは得意なの？」

「うーん、得意でも苦手でもない、普通かなぁ」

「おお…そうか」

「なあなあ二人とも！俺ら先に行ってええ？」

「はやく行こうぜ！レトさん！ぺーぺー！」

「やっぱ僕やだ！！トイレ！トイレ行きたい！！」


ぴーちゃんを引っ張る二人
俺は苦笑いで「行ってらっしゃい」と言った


三人が入ってからしばらくして、スタッフに「では次の組どうぞー」と声をかけられた
「行こ！」とAさんに手を引かれた
自然に繋がれた手を見て少し赤面する

まあ、照れる暇もなく恐怖が訪れるんですが


「うわっ、ナニコレっ」

「お、おお……おおお……」

「蓮さん…手震えてる…ぷふっ」

「う、うるせぇ！」


薄暗い部屋の中、不穏なBGMが流れる
今にも動き出しそうなセットが不安を煽る
繋いでる手に汗が滲んで少し申し訳ない気持ちになるが、そんな事を言っている暇はない


「うおわぁ"ぁ"ぁ"ぁ"あ"あ"あ"」

「「ふはははっ、はははは！！！」」


聞こえてきた悲鳴、それは明らかにぴーちゃんの悲鳴だった
後から聞こえてきたのはレトさんとキヨくんの笑い声

ぴーちゃんに一体何があったのか
一体、この先にどんなトラップが

うっすらと涙が出てきた


そんな時だった


「うあ"あ"〜……」

「うわっ！」

「うわぁぁぁぁあっ！！！！！」


ぶわっと溢れる涙
ガクガクと震える足

もう、情けない姿とかどうでもいいです……

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