【実況者】この歌は君に向けて *Inevitable*

第64話 ページ19

「ねぇA、徹のことどう思う？」


帰り道、突然ヒラがこう言ってきた
どう思う？……って言われても
ヒラがどういう意図で聞いているのかがわからなかった


「どう…って言われても」

「ほら、かっこいいーとか、好きーとか」

「うーん……かっこいいし、かわいい、けど」

「けど？」

「好き、とかはよくわかんない」

「…ほう」

「どきどき…は、するよ？でも、恋とかそういうのはわかんないよ……皆好きだもん」

「……つわはすさん、とか？」

「蓮さんは私のお兄ちゃんだから！」

「……？？？」


ヒラは私から何かを聞き出そうとしているような口調だった
確かに、キスされた時はドキドキした
けど、それは徹くんにドキドキしたんじゃなくて、キスという行為自体にドキドキしたんだと思う

徹くんは好きだけど、特別な好きかどうかはわからない
ヒラだってぴーちゃんだって蓮さんだってキヨだってきっくんだってふぶちゃんだって先生だってえおくんだって

みんな、みんな好きだもん



「恋とか、わかんないよ」

「……俺は、Aのことまだ好きかもよ？」

「……え？」


ヒラに告白された時の記憶が脳内で鮮明に映し出される
顔に少し熱が集まり、ごくん、と喉を鳴らす


「……へへ、なんてね」

「な、なんだよもうー…驚いたじゃん」

「俺は応援するって決めたからね」

「応援ってなんの？」

「んー、内緒」


ニコッと笑うヒラ
そんな可愛らしい笑みを浮かべられてしまったら、もう言及もできない


「あ、A、着いたよ」

「うん、ありがと」

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