プロローグ ページ1
小さい頃、一番仲が良かった男の子に本当の姿を見せた。まだ小学生になっていないかくらいの時。
信頼していたからか、私は油断をした。
幼いわりには、もう恋というものを知っていて、気づいたら好きになっていた人がいた。初恋の人だった。
なのに、彼は軽蔑した目で私を見た。
本当の姿をした私に、色の無い、軽蔑した目で。
「ひっ…!化け物だ!」
いつも優しかった男の子の表情は一変した。
それと同時に、胸あたりからズキッと刺さるような鈍い痛みを感じた。
彼の表情はいつもの優しい顔ではなく、く怯える目、光の無い目が見られた。
その日から、彼は私を“私”として見なくなった。
近寄るな、そう言っているかのように私を避けた。
近所では、私のことでヒソヒソと話す声が聞こえるようになった。
「角田さんちのお子さん、化け物らしいわよ」
「怖い顔で、異臭までするらしいわ」
「気持ち悪いわね」
手で耳を塞いでも、容赦なく突き抜けてくる、近所のおばさん達の甲高い笑い声。
学校に行くたび、私をチラチラと見ながらヒソヒソと話す声。
辛くて、何度も息が詰まりそうになり、お腹が痛くなった。
その出来事で私は、心に深い傷を負った。治りきらないほど大きな傷を。
男の子は何も悪くない。本当の姿、汚い化け物の姿を見せてしまった私が悪いのだ。
小さいながらに、何度も何度も自分自身を責めた。
目は泣きすぎて、赤く真っ赤に腫れた。
その日、私は鏡を見て誓ったんだ──。
本当の姿はもう、誰にも見せない。見えない仮面を被って生きていくと。
もう二度と、幻滅されないようにと。
運が良かったのか、幸い、次の年には親の転勤で引っ越すことになった。それを機に、私は変わろうと決心した。
私は、その場所に引越した時からずっと、本当の姿を誰にも見せたことがない。
それは、誰にも見せることもなく小学校、中学校を卒業し、雄英高校のサポート科に進んだ。
無個性だと馬鹿にされないように、“頭脳明晰”という自力で得た、人より数十倍の学力と知識を個性と偽って──。
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作者名:Hermia | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kakuumusou1/
作成日時:2018年7月1日 20時