あの子はシンデレラ (ページ8)

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隣の席というのは案外関わりがあるもので、いつのまにか松村くんとはとても仲良くなっていた。

『どうしよ、次の化学テストだ……』

しかも化学の先生といえば厳しいと有名だ。もし白紙のテストでも出そうものなら補習待ったなしだろう。

「はぁ、あなたまた忘れてたの？」

青ざめた私に松村くんはため息をつく。そしてノートを渡してきた。

『え、なに？』

「化学のノート。あの人のテストは基本ノートに書いてあることだから。……いらないなら返してもらうけど。」

『ああっ！いりますいります！貸してください！！』

慌てて渡されたノートを抱きしめる私に松村くんは楽しそうに笑った。

「北斗〜！化学のノート見せて〜っ！」

そこにジェシーくんがバタバタと音を立てて走ってくる。

「は？自分のノートは？」

「家に置いてきちゃった！」

AHAHA！ヤバいよね〜と笑うジェシーくんを松村くんは一蹴する。

「無理。今黒木にみせてる。」

「へ、そうなの？」

ジェシーくんは途端にこちらに向き直る。

『あ、うん。けど、ジェシーくんも必要だよね。』

やっぱり私は大丈夫だよ、そう言おうとするとジェシーはにっこりと笑って頷いた。

「黒木さんもノート忘れたんだ、オレは他の子に借りるから大丈夫だよ！」

『あ……。』

有無を言わせぬ勢いでジェシーくんはその場から離れると、自分の席へと戻っていく。

「みさきちゃん、ごめん！化学のノート見せてくれない？」

ジェシーくんがノートを借りたのはみさきだった。

「え、ジェシーくんノート忘れちゃったの？いいよ、一緒に見よ！」

みさきは笑顔でノートを差し出し、2人は横並びになって一つのノートを見る。
その光景から目を逸らしたくて、すぐに松村くんの化学のノートを開いた。