あの子はシンデレラ (ページ15)

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○１４ページ15

「黒木さんって入学式の時に会ってるよね？」

『え。』

「ほら！パスケース落としてたでしょ？」

予想していなかった言葉に驚いて瞬きをする。

『覚えてくれてたの？』

「AHAHA！当たり前じゃん、オレ良いことした〜って思ったからね！」

にこにこと笑ってジェシーくんはそう話す。

「どういうこと？」

状況の分かっていない松村くんとみさきは不思議そうにしていた。

『入学式の日に私がパスケース落としちゃって。それをジェシーくんが拾ってくれたの。』

「あ！入学式の帰りの待ち合わせにまほが遅れたのってそのせい？」

みさきは合点がいったのか、うんうんと頷くと私とジェシーくんを見比べる。

「じゃあ2人にも面識があったんだね！」

「そう！それでさ。」

ジェシーくんはそういうと再びこちらに向き直る。

「黒木さんのこと名前で呼んでも良い？」

『えっ。』

思わず声が裏返る。

「みさきちゃんは名前で呼んでるからさ。黒木さんも名前で呼びたいなって、ダメ？」

ジェシーくんはぶりっ子顔負けのうるうるとした目でこちらを見つめてくる。身長私より高いのにその顔は反則だよ……。

『もちろん、いいよ。私もジェシーくんって呼んでるし。』

「良かった！じゃあまほちゃんね！」

『う、うん！』

名前を呼ばれたことで顔が真っ赤になるのが分かる。好きな人に名前呼びされることはこんなにも威力があるのか。

「北斗は？」

ジェシーくんはそのまま松村くんの方を向く。

「北斗もまほちゃんと仲良いんでしょ？名前で呼ばないの？」

「は？」

ジェシーくんの善意に満ちた言葉に松村くんは呆れたような、戸惑うような声をだす。

『私は……別にどっちでも。』

松村くんが女子を下の名前で呼んでいるところなんて見たことがない。多分断られるだろう。だったら先に自分から断っておきたかった。

「あー……じゃあ、まほ。」

しかしそんな予想を裏切って、松村くんは平然と名前を呼んだ。

「“ちゃん“なんてつけないからな。」

『あ、うん。』

あまりにあっさりと名前を呼ぶ松村くんに拍子抜けする。
いや、彼が名前で呼んでくるのだから、松村くんじゃなくて北斗くんか。