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「試合始めっ！」
体育教師の掛け声と同時にサーブが放たれる。すかさず自陣のバレーボール部員がそのボールを返していく。
『私……意味ある？』
実際、今まで一度もボールに触れていないがゲームは成り立っており、むしろ上手くいっているように見えた。
「黒木さん！」
ぼーっとしかけていた思考を引き戻してボールを目で追う。ちょうどボールは真上に落ちてきていた。
『はいっ！』
大きな声で返事をすると両腕をあげてボールを受け止める用意をする。ボールがその手に触れた瞬間力を込めると、手から滑り落ちたボールは頭にあたり跳ね上がった。
『いてっ』
「返すよっ！」
バレーボール部員の子がフォローを入れてボールを敵陣にアタックする。ボールは見事床に落ち、点数が入った。
「やった！！」
チームメイトたちは喜んでハイタッチをしようと駆け寄ってくる。頭に当たったボールの痛みには気付かないふりをして両手を合わせてハイタッチをした。その瞬間だった。
「危ない！！！」
突然背後から大きな声が聞こえる。隣のコートから勢いよくボールが飛んできたのだ。思わず目を瞑る。
「あっ！！」
閉じていた瞼を開いた瞬間目に入ったのは、飛んできたボールにぶつかられ、床に倒れ込んだみさきだった。
『っみさき！』
慌てて駆け寄ろうとするが、それより先にみさきの元に人が駆け寄る。
「みさきちゃん！大丈夫！？」
ジェシーくんだった。
「せんせー！オレ保健室まで運んでくる！」
ジェシーくんはそういうとみさきの膝裏と背中に腕を回し持ち上げる。いわゆるお姫様抱っこをしながら保健室へ急ぐ姿を呆然と見ることしか出来なかった。
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作者名：カシス | 作成日時：2024年1月7日 23時
