焼き芋から始まる恋【松野千冬】

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土曜日、久しぶりに家に1人で居た





弟の友だちの保護者の方が、たまには休日に1人でゆっくりしなさいと気を遣って弟を連れ出してくれたのだ





『こんなにゆっくりしたの久しぶりだ...』





いつもは幼い弟の声でいっぱいのこの家も、今は私の声が煩いくらいに響いてしまうほど静かだ





今日はバイトも無いし、りっちゃんは良い感じの幼なじみとお出かけするって張り切ってたなあ





忙しい時は休みたいと思うけれど、いざ暇になると何をして良いか分からなくなる





『暇だなあ。』





どこかに出掛けようかとも考えたけれど、特に行きたい所もないしやめた





家事も課題も終わってしまって完全に暇を持て余していた時、来客を知らせる音が部屋に響く





特に確認もせずにすぐ扉を開けると、目の前には少し眉を顰めた私服姿の千冬くん





千｢Aさん、相手が誰か確認してから開けろっていつも言ってますよね？｣





ひえ、怒ってる。普段はあんなに可愛いのに怒った顔はかなり迫力がある





『ごめんなさい。少しだけ千冬くん来てくれたりしないかなって思っていたところだったから...』





これは本当。だって寂しかったし





“あんたって寂しいとかそういうの絶対言わないよね。”





いつかりっちゃんに言われた言葉を思い出す





片親で毎日朝早くから働いてくれている母にまだ幼い甘えん坊の弟





寂しいなんて、思ってたって言えないよ





そんな私の気持ちを知ってか知らずか、千冬くんは優しく抱きしめてくれた





千｢怒ってすいません。昨日の電話で明日は1人だって言ってたから来ちゃいました。｣





そう言って優しく頭を撫でてくれる
それが心地良くて、そっと目を閉じて彼の背中に手を回した




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