こっち向いて、私を見て【九井一】

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「えっと、君が乾青宗くんで、黒髪の君が九井一くん」


『ーーーはじめくん』



もうその声で、その顔で名前を呼んでもらえることはないと思っていた。


変な時期にやってきた転校生に、俺とイヌピーは驚愕した。姿形を見て、口から始めに出てきたのは「赤音さん」だった。


髪型や髪色だけが似てるだけならまだしも、顔も赤音さんにそっくりで、最悪なことに声までも似ていると来た。似ているなんて枠では収まりきらない。完全に同じだ。


動揺していた俺たちは、放課後に確かめるべくその転校生佐野Aを呼び止めた。けれど、すぐに振り払われて帰って行った。


と思えば、東卍の集会中に血相変えて割り込んできた。

マイキーと親しげに話しているから、マイキーの女かと思えば従兄弟だという。それにしても、学校で見た雰囲気とはまるでちがう。


ふわふわとした柔らかい雰囲気も赤音さんと同じだったが、こうしてみるとなんか違う。けど、顔も声も同じだから赤音さんが生きているなんて錯覚を覚えさせてしまう。



「へぇー、二人と同じ高校なんだ」

「あのさ万次郎」

「あ、そうだ二人とも、コイツ、そっちの学校で彼氏作るみたいだからよく見張ってね」



何でもマイキーのお気に入りの服を縮ませたという所業を犯してしまったらしく、震えながらマイキーを宥めている。



「万次郎、たい焼き！たい焼き食べに行こう！お姉さんが奢ってあげる！」

「いい。今日食べたし」

「ならどら焼き！」

「いらない。ていうかエマの看病お願いしたのに何でエマを一人にしてんの？死にてぇの？」



馬鹿みてぇに騒いでいる赤音さんそっくりの佐野Aは思い出したように「そうエマだよエマ！！」と叫んだ。そしてドラケンを指差し、また騒ぎ始める。



「ドラケン！今すぐ集会中止！アンタは今すぐエマのお見舞いに行け！GO！」

「何勝手にお開きにしてんだよてめぇは」



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