こっち向いて、私を見て【九井一】

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月曜日、万次郎に脅されてドラケンと三人で熱海にバイクで行った。だから火曜日。



「イヌピーおはよう」


珍しく一人でいるイヌピーに後ろから話しかける。私の顔を見て「髪の毛」と一番最初に呟いた。髪色戻したし、切ったことをピースサイン添えて伝えれば「似合ってる。可愛いな」と言う。



「そこまでする必要あるか？」

「……うーん、イヌピーのお姉さん髪の毛も同じぐらいの長さだったし」



ふふ、と自分を笑っているとイヌピーと歩きながら教室に向かう。短くなった毛先を指に絡める。きっと真一郎が生きていたら「俺のために伸ばせよ！」って言って怒ってたかもね。



「イヌピー、私、赤音さんに似てる？」



彼の顔を覗き込むようにして質問をする。
そうすれば彼は、目を丸くさせて小さく笑った。顔が綺麗だから笑った顔が素敵だ。



「最初こそは赤音に似ているって思ってたけど、赤音とは全然似てないって今は思ってる。だってお前は佐野Aだろ」



やだなぁ、九井くんにそんな言葉言われたかったなぁ。立ち止まる私に、イヌピーもあゆみを止めた。どうした？と声をかけるイヌピーに、顔をあげて。



「……ありがとう、嬉しい」



泣きたくないのに涙が出ちゃう。目尻に涙を浮かべて小さく笑った。

九井くん来たら今日も頑張ろ〜！とイヌピーの隣を抜けて教室へと入っていく。そこにはすでに自分の席に座っている九井くんがいて。圭介と喧嘩してできたであろう傷がいくつかあった。



「おはよう、九井くん」



どんなに九井くんの言葉に傷付けられようと、私は今日も九井くんにこっちを向いて貰って、私を見てもらえるように頑張るから。



「もうこっち向いてよ！」

「……………んだよ煩せぇな！……ってお前」

「ジャジャーン、髪の毛金髪に戻して、ショートにしました」



少しメイクも変えた。
それでもきっと君はまだ私をみて「赤音さんに似てる」って思ってしまうだろう。



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