23 ページ24
*
「もう大丈夫だから」
それからのことはよく覚えていない。竜胆に上着をかけられておぶられている。
「ごめんなA」
「…………ううん」
竜胆の首の前で結ぶ腕を強くして、「竜胆」と名前を呼ぶと「どうした？」といつものように優しく聞いてくれる。
好き。大好き。伝えたいのに伝えるのが怖いの。
「ありがとう」
私の家ではなくて、竜胆の家に連れ込まれる。殴られた頬を冷やして、傷の手当をしてくれる彼の手はほんの少し震えていた。
肩に触れた時痛みに顔を歪めると竜胆は「嫌がるなよ」と言って、来ていたブラウスのボタンを外して行く。キャミソール姿になって、ぶつけたせいで青くなった肩を見られてしまう。
それだけじゃない。
「お前、やられてはいねぇよな」
「うん、ただ……」
胸は触られたし、吸い付かれたし、最悪だった。
全部、竜胆と初めてしたかったのに。
「………………」
「り、竜胆？」
「嫌なら逃げろよ」
そう言って竜胆は私の首に顔を埋めた。
れろり、と生暖かくてざらざらとした感覚が襲ってくる。あの人たちに触られ、吸い付かれた場所全てにキスをしていく竜胆に小さく声を漏らしてしまう。
「……りん、ど……っ」
「…………」
ソファーに押し倒されて、持っていた氷嚢が床に落ちる。頬にキスを落とした竜胆の背中に手を回した。手が震えている、どうしようなんて思っている暇はないようだ。
目がようやく合って、数秒だけ見つめ合うと少しずつ竜胆と顔が近くなる。何も伝えてないのに良いのだろうか、そう思った時。
「竜胆〜、A〜」
蘭ちゃんの陽気な声に、竜胆はハッとして私の上から退いた。悪い、と言いながらボタンを閉じて行く彼に私は何も言えないまま竜胆を見つめることしか出来なかった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 440人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
推しが尊い - 控えめに言って最高。ガチ拝みます。 そして涙腺崩壊したんだが。主大好きです！これからも愛読します！ (2021年11月24日 1時) (
レス) id: 11fe216a38 (このIDを非表示/違反報告)
お米。(プロフ) - コメント失礼します！めっちゃ感動しました！純愛で初恋、最高です！ (2021年10月20日 21時) (レス) @page46 id: a1083db659 (このIDを非表示/違反報告)
みつば(プロフ) - 読ませていただきました！竜胆が今後どうなるかドキドキです！更新楽しみに待ってます😊 (2021年9月24日 0時) (レス) @page8 id: b05da2f35a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：美桜
| 作成日時：2021年9月23日 14時
