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「美味しかった!」
「そうか!それはよかった」
口の端に紅芋をつけたままのAが、紅芋たるとの感想を連ねていく。可愛げに話すその姿に安堵した。砂糖を大量に入れた珈琲を口にするAは、暫し目を伏せるとゆっくりと俺を見上げた。
蜜柑色のまだ少し充血した瞳に、俺が映り込むと同時にAの口も開かれた。それは先日の任務に、私情を挟んでしまったことへの謝罪だった。
「………結果的にお母さんとはあんな形で分かれてしまったけど、私吹っ切れた、と思う。もう母の一番になりたいために上を目指す必要がなくなった」
俺にいつものように微笑みを向けてくれたAに、もう心配する必要はなくなったのだと感じる。そして、数秒して珈琲から口を離したAが改まった表情に変わる。
しかしすぐに顔を赤らめ、言いづらそうにしながら手を何度も組み直した。「どうした!」と声をかければ、ビグッと肩を上げた。
「あのね、あの時杏寿郎が、"一等大切な人だ"って言ってくれたこと……なんだけど」
「あぁ、あれか!」
あれで少しは気づいて貰えただろうか。
普段顔を赤くしないAがするのだから、流石に気付いてくれただろう。期待を胸に、次の言葉を待つ。深呼吸をしたAが沈黙を破った。
「すごい嬉しかったよ。杏寿郎がそこまで私のこと、大切な継子だと思ってるくれてたって知れて」
「よもや」
「問題ばかり起こしてるてっきりから杏寿郎に呆れられてると最近思ってたんだ。だから、嬉しい」
にぱーっと満面の笑みを浮かべるAに、俺は額に手を当ててそれは深いため息を落とした。ここまでとは思いもしなかった。
「君は本当に鈍いな」
「鈍い?腕は鈍ってないよ」
「そう言うところが鈍いんだ!」
「は?」
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夕憑紅(プロフ) - あの、お話自体を否定しているようで申し訳ないのですけれども、呼吸の色とかは、実物では無かったと、漫画にで書いてあった気がします。 (11時間前) (レス) @page2 id: 2500c6590e (このIDを非表示/違反報告)
美桜(プロフ) - あ ま ね 。さん» コメントありがとうございます。やはり不死川さん好きなので、なにかと絡み入れたくなるんですよね笑夢主ちゃんは風柱のことを「おはぎ柱」と呼んでるんで、毎回この流れになってます笑 (2020年12月5日 20時) (レス) id: d3adf571e3 (このIDを非表示/違反報告)
美桜(プロフ) - めるさん» コメントありがとうございます!そのように言っていただけて嬉しいです。執筆の励みになります!出来るだけ毎日更新していくのでよろしくお願いします! (2020年12月5日 20時) (レス) id: d3adf571e3 (このIDを非表示/違反報告)
あ ま ね 。(プロフ) - おはぎ柱で爆笑しました笑笑 更新楽しみにしてます! (2020年12月5日 8時) (レス) id: 36c644cd03 (このIDを非表示/違反報告)
める(プロフ) - ほんとうにほんとうに美桜さんの作品がすきなので続きが楽しみで仕方ないです…。わくわくして待ってます!! (2020年12月5日 2時) (レス) id: 0fd2e5e0a5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:美桜 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ririsa10713/
作成日時:2020年12月4日 20時