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幸い、この屋敷の奉公人たちを皆外に非難させた後すぐに建物が崩壊した。隠の応援を呼び、生き残った奉公人たちへの事情の説明、建物半壊後の後処理を頼んだ。
すっかりと崩れてしまった自分の育った家を呆然と見つめるAの手からは未だに血が流れていた。ぽたぽたと地面を赤黒くしていく。その手に触れ、予備の包帯を取り出すと優しく巻いた。
「………い"っ」
「済まない。……俺の手はゴツいからな」
「………ううん、やめないで」
手加減をしたつもりだが、痛がらせてしまったようだ。手当てをやめ、隠の者にお願いしようかと思ったがAに止めるなと言われ再びその手に触れた。
止血をし終えると、彼女は「後は隠に任せて帰ろう」と背中を向ける。その後ろを歩いていると、Aの感情を表すかのように雨が降ってきた。大粒の雨だ。
ずっと歩いていたAが歩みを止めた。そして崩れ落ちるように、その場に膝をついたAの体が震え始める。
Aに近づき、同じように膝をつく。
彼女と出会って10年近く経つ。父上に保護され、煉獄家に来た時も、娘のように育てていた母上が亡くなった時も、彼女は涙を見せなかった。嬉し涙や嘘泣きはよくするものの、悲しみの涙を流すのはそれが初めてだった。
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「…………私は生まれてきたらダメだったの?」
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「違う。生まれてきてはいけない人間はいない」
「今まで、ずっと……一番になればお母さんが会いに来てくれるって………信じてたのに……」
昔、【一番】に拘る理由を聞いたことがあった。だが、彼女はそれを頑なに話してくれなかった。いつも誤魔化しては自分で傷ついた顔をずっとしていた。それを知っていながら、俺はずっとそばにいた。
「…………杏寿郎、私はね、………誰かの一番でありたかった……」
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夕憑紅(プロフ) - あの、お話自体を否定しているようで申し訳ないのですけれども、呼吸の色とかは、実物では無かったと、漫画にで書いてあった気がします。 (5時間前) (レス) @page2 id: 2500c6590e (このIDを非表示/違反報告)
美桜(プロフ) - あ ま ね 。さん» コメントありがとうございます。やはり不死川さん好きなので、なにかと絡み入れたくなるんですよね笑夢主ちゃんは風柱のことを「おはぎ柱」と呼んでるんで、毎回この流れになってます笑 (2020年12月5日 20時) (レス) id: d3adf571e3 (このIDを非表示/違反報告)
美桜(プロフ) - めるさん» コメントありがとうございます!そのように言っていただけて嬉しいです。執筆の励みになります!出来るだけ毎日更新していくのでよろしくお願いします! (2020年12月5日 20時) (レス) id: d3adf571e3 (このIDを非表示/違反報告)
あ ま ね 。(プロフ) - おはぎ柱で爆笑しました笑笑 更新楽しみにしてます! (2020年12月5日 8時) (レス) id: 36c644cd03 (このIDを非表示/違反報告)
める(プロフ) - ほんとうにほんとうに美桜さんの作品がすきなので続きが楽しみで仕方ないです…。わくわくして待ってます!! (2020年12月5日 2時) (レス) id: 0fd2e5e0a5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:美桜 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ririsa10713/
作成日時:2020年12月4日 20時