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「ねぇ、火國さん。失礼なこと聞いていいかしら?」
「……え?」
休憩中、杏寿郎はどこだろうとキョロキョロあたりを見渡していると奉公人として働く女中の一人が声をかけてきた。彼女の方に顔を向ければ、二人いてひそひそと何かを話すように私に言葉を投げかけてくる。
「火國さんって、清美様と何か関係でもあるの?」
「……何故ですか?」
「なんだか二人とても似ているから」
そう思われても仕方ない。
母にそっくりな若い女がやってくれば、皆そう思うだろう。だけど変に噂を立てられて、任務に支障が出ては元も子もない。
「何も関係ありませんよ。私、小さい頃両親を亡くして以来、ずっと一人だったんです」
「あら、そう。変なこと聞いてごめんなさいね」
とんでもないです、と笑顔を貼り付けた。
椅子に腰掛けて、自分の手をじっと見つめる。手のひらに出来ているマメが破けて赤くなっている。視界に入ってきた私よりも一回り大きな手が手のひらを覆った。
顔をあげれば杏寿郎がいて、私は小さく微笑んだ。
「何かわかったことはあるか?」
「ううん、全然。けど、きっと夜になればわかる」
だから、夜。そう呟いていると、「夜に何かあるの?」と私たちの間に声が響いた。横を見れば、女中の一人が芋を持っている。彼女は不思議そうに私たちを見た。正確には私と杏寿郎の手、だ。
「手繋いで仲良いわねぇ」
「あ、違っ」
慌てて杏寿郎から手を引こうとするけれど、杏寿郎が力を入れているせいかびくともしなかった。そんな彼を睨みつけるも、いつもと同じような表情をしては「あぁ、その通りだ!」と手を伸ばしてきた。
油断していた、完全に。
後頭部に回された杏寿郎の手に力が入って、引き寄せられる。彼が座っているほうに前のめりになった。杏寿郎は「この通りにな」と、自分も前のめりになり私の頭を自分の胸に押し付けた。
「…………は?」
「まあ本当に仲がいいのね!はい、これさっき焼いたの。焼き芋。ふたりで仲良く食べてね」
「…………は?」
もう一度、「……は?」と呟いた。
その阿呆そうな女中は、ニコニコと戻っていく。焼き芋をもらい、大変喜んでいる杏寿郎が芋を口にした。
「うまい!!」
「……は?」
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夕憑紅(プロフ) - あの、お話自体を否定しているようで申し訳ないのですけれども、呼吸の色とかは、実物では無かったと、漫画にで書いてあった気がします。 (5月8日 17時) (レス) @page2 id: 2500c6590e (このIDを非表示/違反報告)
美桜(プロフ) - あ ま ね 。さん» コメントありがとうございます。やはり不死川さん好きなので、なにかと絡み入れたくなるんですよね笑夢主ちゃんは風柱のことを「おはぎ柱」と呼んでるんで、毎回この流れになってます笑 (2020年12月5日 20時) (レス) id: d3adf571e3 (このIDを非表示/違反報告)
美桜(プロフ) - めるさん» コメントありがとうございます!そのように言っていただけて嬉しいです。執筆の励みになります!出来るだけ毎日更新していくのでよろしくお願いします! (2020年12月5日 20時) (レス) id: d3adf571e3 (このIDを非表示/違反報告)
あ ま ね 。(プロフ) - おはぎ柱で爆笑しました笑笑 更新楽しみにしてます! (2020年12月5日 8時) (レス) id: 36c644cd03 (このIDを非表示/違反報告)
める(プロフ) - ほんとうにほんとうに美桜さんの作品がすきなので続きが楽しみで仕方ないです…。わくわくして待ってます!! (2020年12月5日 2時) (レス) id: 0fd2e5e0a5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:美桜 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ririsa10713/
作成日時:2020年12月4日 20時