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女といえばやはり料理である。
昔誰かが言っていた。
「ちょっと焦げたけど、大丈夫大丈夫」
出来上がった黒いそれを大皿に盛り付けて、次は煮物を作る。さつまいもを乱切りにし、お鍋の中に放り投げる。
A!と台所に入ってきた杏寿郎に何か用でもあるのかと首を傾げた。すぐそばにやってきた彼は大きすぎる咳払いをして「今日の夕餉はなんだろうか!」と聞いてくる。
「さっきちょうど炒め物ができたところなの」
「(…………よもや…この黒いものが、炒め物)」
「今からさつまいもの甘煮作るよ。あ、でも醤油味の方がいいかな」
おたまを片手に聞いてみる。突然顔を片手で覆った杏寿郎は「A!!」と私の肩を掴んだ。なに?と聞くも、彼は言葉を濁してばかりだ。
はっきり言ったらどうだ!と強くいえば、彼は「Aは洗濯物をしていてくれ!」と返された。それなら問題ない。後でする予定だから。謎に胸を張って伝える。
「そうじゃないんだ」
「じゃあ、何?」
「この俺が言っても説得力がないと思うのだが、はっきり言おう。ーーー君の料理の腕は」
そこで閃いた。
杏寿郎が何を言いたかったのか。任務明け、帰ってきたばかりだから、そうだよね。……お腹が空いているのはあたり前だ。つまみ食いをしたかったから、洗濯物を先にするよう促したんだ。
一言言ってくれれば少しぐらいあげるのに。
お箸で摘んだ炒め物を杏寿郎に「はい、あーん」と差し出す。何故か困惑している。だがすぐに意を決したような表情になり、目をこれでもかと瞑ってそれを口にした。
そしてすぐに大きく開かれた目、そして口で。
「まずい!」
「は?」
杏寿郎は馬鹿正直に、感想を述べてくれた。
量が少なかったのかと思い、まずいと叫ばれたことに苛つきながらももう一口食べさせてみる。何度食べさせても彼の口からは同じ言葉しか出てこない。
「まずい!!まずい!!」
「もういい。十分わかったわ!!!」
割烹着を脱ぎ、杏寿郎に押し付ける。
スッと懐から出した、いつでも出せるように忍ばせているそれを杏寿郎に見せた。
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美桜(プロフ) - あ ま ね 。さん» コメントありがとうございます。やはり不死川さん好きなので、なにかと絡み入れたくなるんですよね笑夢主ちゃんは風柱のことを「おはぎ柱」と呼んでるんで、毎回この流れになってます笑 (2020年12月5日 20時) (レス) id: d3adf571e3 (このIDを非表示/違反報告)
美桜(プロフ) - めるさん» コメントありがとうございます!そのように言っていただけて嬉しいです。執筆の励みになります!出来るだけ毎日更新していくのでよろしくお願いします! (2020年12月5日 20時) (レス) id: d3adf571e3 (このIDを非表示/違反報告)
あ ま ね 。(プロフ) - おはぎ柱で爆笑しました笑笑 更新楽しみにしてます! (2020年12月5日 8時) (レス) id: 36c644cd03 (このIDを非表示/違反報告)
める(プロフ) - ほんとうにほんとうに美桜さんの作品がすきなので続きが楽しみで仕方ないです…。わくわくして待ってます!! (2020年12月5日 2時) (レス) id: 0fd2e5e0a5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:美桜 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ririsa10713/
作成日時:2020年12月4日 20時