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襖越しの陽光が目に入り、眩しく薄らと目を開ける。
そういえば、と昨日の夜杏寿郎と話した後のことを覚えていないことに気がついた。もしかしてあのまま縁側で寝てしまったのか。杏寿郎がここまで運んでくれたようだ。
温かい布団に包まれていた私は、身動きを取ろうと寝返りを打った。反対を向き、違和感に気がつく。温かいのは布団ではない。これは人間の体温だ。
筋肉質な腕に力が入り、ギュッと引き寄せられた。
「杏寿郎、起きて」
「………よも……や……」
定番のムニャムニャとは違う寝言に思わず笑ってしまう。まあ今日はお互い任務もない非番だし、もう少し寝かせてあげようか。
それにしても懐かしい夢を見た。懐かしいとは程遠い気もするけれど、私にとって彼との出会いは人生をやり直す起点になっていた。
大きなあくびを手を上げてしていれば、杏寿郎と私の間に腕を収められる隙間がなくなってしまった。密着した体に、心臓が慌ただしく太鼓を叩く。
致し方あるまい。杏寿郎の背中に手を回して、二度寝を決めようとした。
「ーーーA、隠が新しい隊服を持ってきている。入るぞ」
槇寿郎さんの声にハッとした。
二度寝をしている暇ではない。杏寿郎と抱き合った形で寝ている私の部屋がゆっくりと開かれた。「杏寿郎起きて!」と背中を叩くが、全然起きてくれない。5日間の鬼殺の任務での疲労が蓄積しているからだと思う。
やだ嘘でしょと襖の方を見た時、顔面蒼白になる槇寿郎さんと後藤さんが私たちを見ていた。「父上、兄上、Aさんこんなところにいたんですね」とやってきた千寿郎の目を槇寿郎さんは急いで大きな手で覆った。
音を立ててしまった襖の向こうで槇寿郎さんの低い声が聞こえてきた。
「杏寿郎が起きたら、俺のところに来るよう伝えろ」
それだけ言うとすぐに部屋の前は静かになった。
杏寿郎にしては遅い目覚めだった。9時半ぴったりに目を覚ました彼はいつも通り「おはよう!よく眠れたな!」と言う。
「なんで私は杏寿郎と一緒に寝てたわけ?」
「君が離してくれなかったからだ!」
「絶対嘘だ!私の信用がなくなっちゃった!」
わー!!!と頭を自分の手で掻き乱す。一緒に寝ているところを槇寿郎さんに見られてしまったことを伝えれば、彼は特になんの心配の色も見せず、槇寿郎さんのところへと向かった。
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夕憑紅(プロフ) - あの、お話自体を否定しているようで申し訳ないのですけれども、呼吸の色とかは、実物では無かったと、漫画にで書いてあった気がします。 (4時間前) (レス) @page2 id: 2500c6590e (このIDを非表示/違反報告)
美桜(プロフ) - あ ま ね 。さん» コメントありがとうございます。やはり不死川さん好きなので、なにかと絡み入れたくなるんですよね笑夢主ちゃんは風柱のことを「おはぎ柱」と呼んでるんで、毎回この流れになってます笑 (2020年12月5日 20時) (レス) id: d3adf571e3 (このIDを非表示/違反報告)
美桜(プロフ) - めるさん» コメントありがとうございます!そのように言っていただけて嬉しいです。執筆の励みになります!出来るだけ毎日更新していくのでよろしくお願いします! (2020年12月5日 20時) (レス) id: d3adf571e3 (このIDを非表示/違反報告)
あ ま ね 。(プロフ) - おはぎ柱で爆笑しました笑笑 更新楽しみにしてます! (2020年12月5日 8時) (レス) id: 36c644cd03 (このIDを非表示/違反報告)
める(プロフ) - ほんとうにほんとうに美桜さんの作品がすきなので続きが楽しみで仕方ないです…。わくわくして待ってます!! (2020年12月5日 2時) (レス) id: 0fd2e5e0a5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:美桜 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ririsa10713/
作成日時:2020年12月4日 20時