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腕に抱えた焼き芋を見て、笑みをこぼす。
真っ直ぐと歩いていた道を横に曲がり、煉獄家の門をくぐり抜けた。玄関で下駄を脱いで揃えると廊下を歩く。目の前からやってきた槇寿郎さんにどこかいくのか聞けばお酒を買いに行くという。
「またですか?肝臓に悪いですよ」
「煩い黙れ」
「人が健康に気を使ってくださいと言っているのに、全く」
これでも食べてなさい、と焼き芋を一つ彼に押し付けるとその横を通り過ぎた。廊下を曲がり、縁側へと出るとそこに座っていた人物の名前を呼んだ。
「杏寿郎」
「Aか。今日は非番か?」
「うん。杏寿郎こそ、帰ってきてたんだ」
「あぁ、先ほどな」
ならばちょうどよかった。
杏寿郎の隣まで行って腰を下ろす。紙袋に入ったたくさんのさつまいもから大きなものをピックアップして彼にあげる。
うまい!うまい!と叫ぶように声をあげる杏寿郎の傍、私も同じように「うまい!」と言って小さな焼き芋を口にした。
「さっき槇寿郎さんとすれ違ったけど、また何か言われたの?」
「いつものことだ気にしてなどいない!」
「どうせそうだろうと思って焼き芋押し付けておいた」
横に置いた紙袋から新たに大きな芋を探し、すでに食べ終えている杏寿郎に渡す。大きくかぶりついた芋が熱く、口の中で冷ました。
気にしていないとは言えども、元炎柱で実の父親から言われるのは彼自身辛いものがあるかもしれない。私には話さないが、杏寿郎自身いろいろ考えていると思う。
「誰がなんと言おうと、杏寿郎は立派だよ」
「よもや、君がそこまで俺を褒めるとはな」
「私、杏寿郎のことは誰よりも知ってる自信あるよ。貴方が気を落とすたびに、私が慰めてあげる」
もしも貴方のことを否定する人が現れたら、私が貴方の全てを肯定する。杏寿郎は優しくて、温かい、頼り甲斐のある素敵な人だって、納得してもらえるまでずっと伝え続ける。
最後の一口を食べ終えると、未だにたくさん残っている焼き芋を全て杏寿郎に押し付けた。彼はそれを手に、「Aが食べたくて買ってきたのではないのか」と私をみる。
言ったでしょ、私はさつまいもより紅芋の方が好きだって。……なんて、口には出さないけれど。キュッと口の端をあげる私をみた貴方には伝わっているはず。
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夕憑紅(プロフ) - あの、お話自体を否定しているようで申し訳ないのですけれども、呼吸の色とかは、実物では無かったと、漫画にで書いてあった気がします。 (4時間前) (レス) @page2 id: 2500c6590e (このIDを非表示/違反報告)
美桜(プロフ) - あ ま ね 。さん» コメントありがとうございます。やはり不死川さん好きなので、なにかと絡み入れたくなるんですよね笑夢主ちゃんは風柱のことを「おはぎ柱」と呼んでるんで、毎回この流れになってます笑 (2020年12月5日 20時) (レス) id: d3adf571e3 (このIDを非表示/違反報告)
美桜(プロフ) - めるさん» コメントありがとうございます!そのように言っていただけて嬉しいです。執筆の励みになります!出来るだけ毎日更新していくのでよろしくお願いします! (2020年12月5日 20時) (レス) id: d3adf571e3 (このIDを非表示/違反報告)
あ ま ね 。(プロフ) - おはぎ柱で爆笑しました笑笑 更新楽しみにしてます! (2020年12月5日 8時) (レス) id: 36c644cd03 (このIDを非表示/違反報告)
める(プロフ) - ほんとうにほんとうに美桜さんの作品がすきなので続きが楽しみで仕方ないです…。わくわくして待ってます!! (2020年12月5日 2時) (レス) id: 0fd2e5e0a5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:美桜 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ririsa10713/
作成日時:2020年12月4日 20時