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恋仲になってから、私と杏寿郎が出かける場所と言ったらだいたい限られている。両親のお墓参り、そして街にあるさつまいも屋にて焼き芋を購入し、綺麗な水の流れる水辺でそれを並んで食べる。
毎回と言っていいほど、流れはそんな感じだった。
だから、今日も初めに両親のお墓参りを済ませて、街を歩きながら店を見て、そしていつものところで焼き芋を二つ購入する。
一つで足りますか?と聞くと、足りないと答えるも私と食べる時はそれだけで足りるとのことらしい。正直ちょっとよくわかんないけど。
「ここは昔と全然変わらないな!」
「うん。なんにも変わらない」
両手で大きな焼き芋を抱える。
私の隣ではいつもより小さめにさつまいもに噛み付く杏寿郎が「うまい!うまいうまい!」と声をあげた。
初めて会った時、すごく驚いたけれど今じゃもう慣れてしまった。それに笑って、私も同じように食べる。
「美味しいね、杏寿郎」
彼を見つめてそう感想をつけると、彼はキョトンとした表情をしたのち、「やはり君は変わらないな」と柔らかく笑った。
「初めて出会った時も、そんな風に笑っていた」
「そうだったっけ」
「あぁ、それが幼心にも可愛らしいと思ったんだ」
もう昔のことを思い出すことは少ないけれど、彼は随分と鮮明に思い出せるようだった。それが嬉しくて、私は手の中にある焼き芋を食べ終えるのが少し惜しくなってしまった。
「この川、昔よく来てましたよね」
「そうだな!」
この川には思い出がたくさんある。
初めて私がこの川を知ったのは、ここに杏寿郎がいたからだった。
川を眺めていると心地よい風が髪を靡かせた。それを手で押さえれば、隣から手が伸びてきて、私の髪の毛をそっと優しく撫でる。
「ーーーふふ、」
「!」
膝を抱えて、杏寿郎に微笑む。
珍しく頬を染めた杏寿郎が笑い返してくれた。
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るる - 読んでる途中に目から水が、、、、、、、、 とってもいい作品でした!!!!!! (7月25日 14時) (レス) @page50 id: daa8a87cdb (このIDを非表示/違反報告)
ユキ(プロフ) - 初めまして!涙なしに観れませんでした… (2021年9月26日 18時) (レス) @page50 id: fb083d1d07 (このIDを非表示/違反報告)
名無し12758号(プロフ) - 素敵なお話をありがとうございます…!一話目から引き込まれて全て読みました、鼻水まで出してみっともない泣き顔で読んでしまいました…笑笑映画でもボロ泣きしましたがこれでも号泣してしまいました、素敵な話が読めて良かったです。本当にありがとうございます! (2020年11月23日 19時) (レス) id: 3be706ff9b (このIDを非表示/違反報告)
ちえ - 初めまして!このお話を深夜に見かけ一気に読みました。映画でも泣きましたが、このお話も号泣でした。素敵なお話ありがとうございます。何度でも読んでしまいそうです。 (2020年11月23日 2時) (レス) id: b7bf575f91 (このIDを非表示/違反報告)
raaaaaaam(プロフ) - 初めまして!私も一気に読み、深夜なのに号泣笑 隣に寝てる子供が起きるぐらい泣いてしまいました笑 煉獄さん、、最高!素敵な夢を見させて下さりありがとうございます(T_T) (2020年11月20日 4時) (レス) id: c6906907ca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:美桜 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ririsa10713/
作成日時:2020年10月26日 20時