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道中、胡蝶さんに鬼殺隊での杏寿郎さんの話について聞かせてもらった。私の知らない彼を彼女は知っている。柱になる直前の話など。
「不死川さん……今の風柱と一悶着あったんですよ」
「そ、そうだったんですね。……でも彼らしい」
ふふっ、と小さく笑う。
並の人間では、そう簡単には柱にはなれない。
強さと誇りを持っている杏寿郎さんだからこそ、今の彼がある。杏寿郎さんの話を聞いて、また彼を好きになる。
先に千寿郎くんを屋敷まで送り届け、私の屋敷に向かう。屋敷の前に着くと、胡蝶さんを見て礼を言った。
「ありがとうございます」
「…………もしかして、お一人ですか?」
「はい、そうです。数年前に、両親は………鬼に殺されてしまいました」
はは……と無理して笑う。
彼女は「そうでしたか」とまるで他人事ではないような顔つきになった。きっと彼女も私と同じなんだろう。鬼に大切な人を殺された。そんな感じがした。
胡蝶さん、そう彼女を呼んで「杏寿郎さんのことよろしくお願いします」と深々と頭を下げた。
「私には何も彼にしてあげられない。そばにいたって怪我の治療をしてあげられる訳でもない、むしろ何の役にも立ちません」
「…………」
「私はただ彼が無事に帰ってきてくれることを祈るぐらいしか出来ないので……。彼の怪我の治療、……お願いします」
そばにいたって、何もできない。
だからこそ、彼女にこうしてお願いすることしかできない。
「煉獄さんが貴方を好いている理由がどことなくわかりました」
「………きっと杏寿郎さんは、自分が思っている以上に私が杏寿郎さんのこと愛してるって知らないんです」
「ーーー胡蝶さん、今のは杏寿郎さんには秘密ですよ」
微笑んで見せると、胡蝶さんも微笑んだ。
「似ていますねぇ」と小さく呟いて。
「会えて良かったです」
「はい、私もです」
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るる - 読んでる途中に目から水が、、、、、、、、 とってもいい作品でした!!!!!! (7月25日 14時) (レス) @page50 id: daa8a87cdb (このIDを非表示/違反報告)
ユキ(プロフ) - 初めまして!涙なしに観れませんでした… (2021年9月26日 18時) (レス) @page50 id: fb083d1d07 (このIDを非表示/違反報告)
名無し12758号(プロフ) - 素敵なお話をありがとうございます…!一話目から引き込まれて全て読みました、鼻水まで出してみっともない泣き顔で読んでしまいました…笑笑映画でもボロ泣きしましたがこれでも号泣してしまいました、素敵な話が読めて良かったです。本当にありがとうございます! (2020年11月23日 19時) (レス) id: 3be706ff9b (このIDを非表示/違反報告)
ちえ - 初めまして!このお話を深夜に見かけ一気に読みました。映画でも泣きましたが、このお話も号泣でした。素敵なお話ありがとうございます。何度でも読んでしまいそうです。 (2020年11月23日 2時) (レス) id: b7bf575f91 (このIDを非表示/違反報告)
raaaaaaam(プロフ) - 初めまして!私も一気に読み、深夜なのに号泣笑 隣に寝てる子供が起きるぐらい泣いてしまいました笑 煉獄さん、、最高!素敵な夢を見させて下さりありがとうございます(T_T) (2020年11月20日 4時) (レス) id: c6906907ca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:美桜 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ririsa10713/
作成日時:2020年10月26日 20時