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「千寿郎くん、ごちそうさまでした。また来るね」
「はい、Aさん。お待ちしてます」
撫でると、照れ臭そうにはにかむ千寿郎くん。そんな私と千寿郎くんを横で見ていた杏寿郎さんは「むっ」と小さくつぶやいた。
それに気づいた私と千寿郎くんは、二人で彼を見つめて小さく笑った。手を伸ばし、杏寿郎さんの頭を撫でる。
「あれ?違いました?」
「間違ってはいないが……」
「ふふふっ」
ゴホンッと咳払いをした彼に撫でるのをやめると、日の沈んだ暗い夜道を二人で歩き出した。玄関先まで見送ってくれた千寿郎くんに手を幾度となく振るう。
「よもやよもや、千寿郎にヤキモチを妬くとはな!」
「えっ」
「うむ、なんでもない!忘れてくれ!」
強さの中に、ちょっとした可愛さもある。
それがなんとも愛らしくて、手が離せない。
屋敷の前に着いて「ここで大丈夫です」と礼を言う。杏寿郎さんは、この町にいる間は顔を出しにくると宣言した。
「ここでも鍛錬は出来るしな!」
「千寿郎くんとの時間も作ってあげてくださいね」
「そのつもりだ!」
千寿郎くんも杏寿郎さんのことが大好きだから。私一人が彼を独り占めするわけには行かない。明日の予定を聞いてくる杏寿郎さんに、何もないと伝えれば朝早くに来ると言った。
お休みなさい、と頭を下げて背中を向けて玄関に手をかける。「A!」そう呼ばれて、振り向けばすぐそこにまだ彼はいた。
こちらへと歩いてくる彼に不思議と首を傾げる。
「接吻をしてもいいだろうか?」
杏寿郎さんはいつも接吻の許可を取ってくる。
いつものことだけど、その度にポカンとする私はすぐに笑って「いいですよ」って貴方に伝える。
「許可します」
「うむ!」
優しく触れた肩を引き寄せ、唇が触れ合う。
唇が離れるときっと彼は次にこう言うだろう。
ーーー抱きしめても良いだろうか?
「抱きしめても良いだろうか?」
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るる - 読んでる途中に目から水が、、、、、、、、 とってもいい作品でした!!!!!! (7月25日 14時) (レス) @page50 id: daa8a87cdb (このIDを非表示/違反報告)
ユキ(プロフ) - 初めまして!涙なしに観れませんでした… (2021年9月26日 18時) (レス) @page50 id: fb083d1d07 (このIDを非表示/違反報告)
名無し12758号(プロフ) - 素敵なお話をありがとうございます…!一話目から引き込まれて全て読みました、鼻水まで出してみっともない泣き顔で読んでしまいました…笑笑映画でもボロ泣きしましたがこれでも号泣してしまいました、素敵な話が読めて良かったです。本当にありがとうございます! (2020年11月23日 19時) (レス) id: 3be706ff9b (このIDを非表示/違反報告)
ちえ - 初めまして!このお話を深夜に見かけ一気に読みました。映画でも泣きましたが、このお話も号泣でした。素敵なお話ありがとうございます。何度でも読んでしまいそうです。 (2020年11月23日 2時) (レス) id: b7bf575f91 (このIDを非表示/違反報告)
raaaaaaam(プロフ) - 初めまして!私も一気に読み、深夜なのに号泣笑 隣に寝てる子供が起きるぐらい泣いてしまいました笑 煉獄さん、、最高!素敵な夢を見させて下さりありがとうございます(T_T) (2020年11月20日 4時) (レス) id: c6906907ca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:美桜 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ririsa10713/
作成日時:2020年10月26日 20時