134 ページ37
*
「雨止んだなァ」
「……うん」
半年間、つまり実弥とあの任務で出会ってから、恋仲になったまでの記憶を失っていた。実弥の言葉で思い出したとはいえ、実弥には辛い思いをさせてしまった。
一ヶ月近く実弥のことを思い出せなかった。その間の記憶はちゃんとあるため、蝶屋敷で実弥が胡蝶様に話していたことも覚えている。
実弥はなんともないフリをしては、今まで通り接してくれてるけど、やっぱり寂しかったはずだ。屋敷に入る前に、実弥の服を引っ張って「本当にごめんなさい」と謝る。謝るなと言われるけど、それじゃ私の気がすまない。
「実弥、辛かったでしょ?」
「………まァ」
「私にしてほしいことない?」
寂しい思いをさせてしまった分、今私にできることをしてあげたい。間違っているかもしれないけれど、それで埋められてあげられるなら。
じっと実弥を見ていれば、彼は「じゃァ、接吻させろ」と呟くと私の腕を強引に引っ張って唇を押し当てた。顔の角度を何度も変えながらされる濃厚な接吻。接吻音が小さく聞こえる。
長い接吻に力が抜けて、足から崩れ落ちそうになるけれど、実弥は私の腰を支えた。まだだ、と言わんばかりの接吻に、酔いしれ思考がうまく回らない。
やっと実弥の気が済んだ時、離れた唇で息を吸う。ぐったりとなり、思わず実弥の胸に体を預け、顔をあげれば、彼は満足そうに頬をあげた。
「ーーーその顔が見たかったァ」
彼の目に映る私は、今どんな顔をしているのだろうか。実弥の温かい手が頬を撫で下ろす。
.
1143人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ちい - 最後まで読めて良かったです!お疲れ様でした。とっても素敵な作品でした! (2020年7月15日 11時) (レス) id: 51ace004ba (このIDを非表示/違反報告)
めんま - 完結おめでとうございます!本当にいい作品に出会えて幸せでした!!! (2020年7月13日 21時) (レス) id: c67fb2a2b3 (このIDを非表示/違反報告)
らはさ - ごめんなさい。↓↓↓間違えて、2つ書きこんでしまいました。 (2020年7月13日 20時) (レス) id: 9c9562d775 (このIDを非表示/違反報告)
らはさ - ベイバの小説からこの小説を発見しました。これも面白かったです。 (2020年7月13日 20時) (レス) id: 9c9562d775 (このIDを非表示/違反報告)
らはさ - ベイバの小説からこの小説を発見しました。これも面白かったです。 (2020年7月13日 20時) (レス) id: 9c9562d775 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:美桜 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ririsa10713/
作成日時:2020年6月11日 20時