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非番の今日、報告書を屋敷でまとめる。
Aのところにはいかねぇ。つーか、最近全く会っていない。
ついこの間の任務にて、久々に自傷行為をし、鬼を退治した。蝶屋敷に行けば、Aと出会してしまっていた。
かれこれもう一ヶ月が過ぎていた。なかなか記憶の戻らないAに、このまま一生元にもどらねぇんじゃ、と柄にもなく不安に駆られていた。もう一度惚れさせようと決めていたが、今のAはあの頃と同じでかなり厳しい。
だが、俺が今もAを愛しているのには変わりはない。ただ少し距離を取っているだけだ。筆を置き、ハァと大きなため息をして背中を畳につける。
「クソォ、アイツに名前呼ばれてェなァ」
「ーーーアイツって、姉ちゃんのこと?」
「!?!」
俺の視界いっぱいに映るのは隼人だった。驚いて思わず顔をあげれば、そいつの額とぶつかる。互いに額を押さえて、隼人に「一人か」と聞けば、Aは街に買い物に出かけたと教えてくれる。
最近では、隼人は一人でいろんなところに出掛けるようになっている。前にAが成長したと涙を流しながら浸っていたか。
「実弥兄ちゃん最近来ないからさぁ。姉ちゃんの記憶もなかなか戻んないし……」
「……………まァ、仕方ねぇよなァ」
「でも姉ちゃん、不意に自分でも誰だかわからない存在を探してるんだ」
俺の上に乗ってくる隼人に「重くなったな」と呟く。
Aの現状を詳しく教えてくれるのは正直助かった。様子を見に行けないから、どうしているのか心配だった。
隼人と一緒に鍛錬をしていれば、空に灰色に染まっていく。次第に降り出した雨に、隼人は「姉ちゃん傘持っていってない」といった。
「ちょっくら行ってくるから、留守番できるかィ」
「うん!」
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ちい - 最後まで読めて良かったです!お疲れ様でした。とっても素敵な作品でした! (2020年7月15日 11時) (レス) id: 51ace004ba (このIDを非表示/違反報告)
めんま - 完結おめでとうございます!本当にいい作品に出会えて幸せでした!!! (2020年7月13日 21時) (レス) id: c67fb2a2b3 (このIDを非表示/違反報告)
らはさ - ごめんなさい。↓↓↓間違えて、2つ書きこんでしまいました。 (2020年7月13日 20時) (レス) id: 9c9562d775 (このIDを非表示/違反報告)
らはさ - ベイバの小説からこの小説を発見しました。これも面白かったです。 (2020年7月13日 20時) (レス) id: 9c9562d775 (このIDを非表示/違反報告)
らはさ - ベイバの小説からこの小説を発見しました。これも面白かったです。 (2020年7月13日 20時) (レス) id: 9c9562d775 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:美桜 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ririsa10713/
作成日時:2020年6月11日 20時