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「仲良くねェ」
「もう仲良くしてって言ったじゃない」
冨岡さんと一緒にやってきた実弥に、仲良しだねと言うとすごい嫌そうに顔を歪める。どうやらまだ冨岡さんに心を開いてくれてないらしい。
だが、冨岡さんがこうして屋敷を訪れるのは珍しかった。私のところを訪ねるのは片手で数えられるほどだ。
冨岡さんを睨んでいる実弥をさておき、「どうかしたんですか?」と聞けば、彼は手に持っていた風呂敷を私に渡してきた。え?と溢す私に、彼の隣にいた実弥までもは?と溢す。
「今日誕生日だろう」
「……あ、」
そういえば今日誕生日だったと、この時漸く気づいた。受け取ったものを広げてみると、以前文を送った際に、切れ味のいい包丁が欲しいと書いていたからか良さそうなそれと激辛煎餅の詰め合わせが入っていた。
お礼を言って、文の返信もくれると私嬉しいですと伝えれば「何を書いていいかわからない」と言われる。彼らしいなぁ。
包丁はどうやら冨岡さんの刀鍛冶に頼んだらしい。頂いた風呂敷と一緒に近くに置いて、「覚えててくへたんですね」と言えば、隼人が私の着物を引っ張った。
どうしたの?と顔を向ければ、「あっち」と指差す。指が向けられたほうには顔面蒼白になる実弥がいた。
「…………なんでコイツが知ってて、俺が知らねぇんだァ」
「実弥、生きてる?」
仕方ない、そういう話を今までにしたことがないのだから。……なんて思っているとふとあることに気がついた。
私は実弥の誕生日も知らないし、過去も知らない。よくよく考えれば、私たちはお互いのことをあまりよく知っていないのだと。
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ちい - 最後まで読めて良かったです!お疲れ様でした。とっても素敵な作品でした! (2020年7月15日 11時) (レス) id: 51ace004ba (このIDを非表示/違反報告)
めんま - 完結おめでとうございます!本当にいい作品に出会えて幸せでした!!! (2020年7月13日 21時) (レス) id: c67fb2a2b3 (このIDを非表示/違反報告)
らはさ - ごめんなさい。↓↓↓間違えて、2つ書きこんでしまいました。 (2020年7月13日 20時) (レス) id: 9c9562d775 (このIDを非表示/違反報告)
らはさ - ベイバの小説からこの小説を発見しました。これも面白かったです。 (2020年7月13日 20時) (レス) id: 9c9562d775 (このIDを非表示/違反報告)
らはさ - ベイバの小説からこの小説を発見しました。これも面白かったです。 (2020年7月13日 20時) (レス) id: 9c9562d775 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:美桜 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ririsa10713/
作成日時:2020年6月11日 20時