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「実弥!」
「ーーーは?」
朝、数学準備室に入る前、いきなり抱きついてきたのは愛しい女だった。だが、コイツは俺との記憶がなく、やっと思い出したのは俺がAを殺した最後の瞬間の記憶。
それからずっと避け続けられた俺に、抱きついてきたAは今俺のことを「実弥」と呼んだ。戸惑っていれば、顔をあげたAが微笑んで「良かったこの時代でも実弥がいて!」という。
「し、不死川先生!緊急事態!!」
「我妻?」
俺たち二人の背中を押し、数学準備室に押し込む我妻。そして、Aの様子がおかしい理由を話してくれた。
中身が大正時代のAになっている、と奴は言う。意味がわからないことだが、納得できる話だった。何故ならば、俺のことを名前で呼びこうして笑顔を向けてくるのだから。
「いつ入れ替わったァ?」
「わからないけど、朝起きたら……」
両親が生きてて驚いたと涙混じりにAは話す。そうだ、コイツの両親は鬼に殺されているんだ。目が覚めて両親が生きていれば驚くだろう。
「でも、良かった。実弥とも会えた…」
「…………別に良くねェよ」
「どうして?」
なにも知らない。
鬼になったお前を殺したことも今のコイツにはまだわからないだろう。それを思い出したAが俺を避けていることも。
「…………ごめんなさい。不謹慎でした。この時代における私がどう実弥と関わっているかもわからないのに、いきなり抱きついたりして」
「…………」
「今の実弥にそんな顔させてる原因は私かな?」
「泣きそうな顔してる」と眉を下げるAに、俺は否定が出来なかった。
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まやら - す、素晴らしい!泣きました。 (2020年7月13日 21時) (レス) id: 9c9562d775 (このIDを非表示/違反報告)
すずな(プロフ) - 泣きました。素晴らしい作品ありがとうございます! (2020年5月24日 0時) (レス) id: 5706aaffc1 (このIDを非表示/違反報告)
あられ - 初めまして、あられと申しますm(。>__<。)m思わず泣いてしまいました!それくらい切なくて早くヒロインちゃん思い出して〜(;_;)ってなりました。お仕事大変かと思いますが連載楽しみにしております!ご自愛くださいませ。 (2020年4月30日 2時) (レス) id: 467fdee8e1 (このIDを非表示/違反報告)
絵理奈(プロフ) - 1日40時間の残業大変ですね (2020年4月27日 14時) (レス) id: e2382ac4cf (このIDを非表示/違反報告)
smile0312(プロフ) - 新作ありがとうございます!応援しております (2020年4月20日 19時) (レス) id: 604129552a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:美桜 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ririsa10713/
作成日時:2020年4月20日 15時