焦がれる.【不死川実弥】

34 ページ36

*



目が覚めると、すぐそばにいた最愛の女の様子がおかしかった。ソイツは俺を蹴っては怯えたように離れている。


話によると、血鬼術か何かで今この大正時代に生きているAと、いつの時代かのAが入れ替わったようだ。


恋仲になって結構経ち、俺に対しても随分と可愛らしい反応をしていたAは、今は別人のようにヨソヨソしい。


中身が別の時代のAだから仕方がない。
だが、こうも他人行儀なのは少し、胸が痛ェ。



「ーーーで、なんでそんなに俺から離れてんだァ」

「…………怖いので」



はっきりと言われ、思わず固まってしまう。

ハァと息を吐いて、立ち上がるとAの頭に触れた。撫でれば、体をびくつかせる。コイツが生きている時代では俺とどんな関わりを持っているのか不思議になる。



「別に悪いようには何もしねぇよ」

「え……」

「つーか、中身が違くとも、今の時代ではお前は曲がりなりにも俺の恋人なんだぜ。嫌がることして嫌われたくねぇよ」



きっとコイツの世界では俺とは恋仲でもなんでもないのだろう。察するに俺のことを先生と呼んでいたから、きっとただのそういう関係に過ぎない。



「…………てめぇが元に戻るよう協力してやる」

「……あ、ありがとうございます」



隊服に着替え、ついてこいと言えば俺との距離を少し開けてついてくる。距離があるなァと思いながらも、俺が知っているAではないのだから仕方ないと奮闘する。



.

35→←33

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す