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目が覚めたのは感触を感じたから。
まるで壊れ物を扱うように優しい接吻。目を開けて体を起こせばすぐ近くで背を向けて座る不死川さんがいた。この空間には二人しかいなく、その感触の持ち主が彼であることがすぐにわかった。
私が小さく呟いた言葉に彼はすぐに振り向いた。
今までずっとそう言うことに疎かった私でさえ、それをされればすぐにわかる。首まで熱が周り、赤くなる私に彼は「……起きてたのかィ」と言った。
そして何か言葉を紡ぐ前に私は口を開いた。
「………い、今のはなかったことにします……っ、だから、その……大丈夫ですっ」
「は?」
目の前で手を振って完全否定し、何もなかったことにしたいと願い出る。そんな私を見て、不死川さんは「風門」と名前を呼んだ。
ーーーそんな優しい声で呼ばないで。
口に出すわけにはいけない。「私も忘れるから」となかったことにしたいと何度も言う私に、彼は「……そうかよ」と弱く言った。
顔をあげればひどく傷ついた顔をしている彼がいて。私は部屋を飛び出した。本音は彼の口から全部聞きたかった。
それでも私は隼人の幸せを一番に考えなきゃいけないから、と自分の気持ちに蓋をする。ほんのり小豆の甘い味が残る唇に触れて、「……甘い」と呟いた。
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呑子(プロフ) - 2話のひなき様がひなぎ様になってます (2020年6月11日 21時) (レス) id: b937ad49b1 (このIDを非表示/違反報告)
菜一郎(プロフ) - きゃああああ名前で呼んで欲しいってとこ可愛すぎぃぃいいいい (2020年5月29日 17時) (レス) id: 2c549b1da3 (このIDを非表示/違反報告)
鏡花(プロフ) - ぐはっ!告白ぅぅぅ!!尊い!!!死ぬ!!!! (2020年5月25日 23時) (レス) id: c8a359bcaf (このIDを非表示/違反報告)
Ø(プロフ) - こんなに素敵な小説に出会えてよかったです!大変かもしれないですが無理せずがんばってください!応援させていただきます!! (2020年5月21日 0時) (レス) id: 712c3e0bb6 (このIDを非表示/違反報告)
ハチハチ1129(プロフ) - 美桜さんの作品最高です!私も逮捕されたい、補導されたいと思いました(*^ω^*) (2020年5月19日 6時) (レス) id: 12ce184d67 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:美桜 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ririsa10713/
作成日時:2020年5月16日 13時