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迷惑だと言われ、距離を置いていたその女が訪ねてきた。顔は見るからに真っ青になっており、隼人の行方を聞いてくる。
他人に迷惑をかけまいと事情を言わない風門を呼び止めて、訳を聞くと急に大粒の涙を浮かべて泣き始めた。嗚咽混じりに発した「隼人が帰ってこない」と言葉。
餓鬼が外を出歩いていい時間ではないことは当たりの暗さを見ればわかる。それに、鬼が夜に活動することを知っているなら尚更だ。
「……ど、どうしよう……っ、もしも……鬼に会ってたら……っ」
「落ち着けェ!」
雷の日、あの時よりも大きく震える風門に声をかけるも隼人のことが心配すぎて落ち着きをなくす。そうしていると、風門の鴉がやってきた。
日中、蝶屋敷に赴いた隼人が胡蝶の屋敷にある花の図鑑を見ては「Aさんのために花を探し山に入ったのかもしれない」と胡蝶から文には書かれていた。
それを見た風門はすぐに立ち上がり走っていく。そのあとを追って、山の中に入っていく。必死に隼人の名前を叫びながら探すもなかなか見つからない。
どんどん奥の方に入っていき、隼人を呼べば小さな声で「……ねぇ……ちゃん…」と聞こえてきた。声の方へと走っていくと、そこは10メートルほどの崖があり、下から声を振り絞る隼人がいた。
その崖から降りようとする風門の服を掴んで、「俺が降りるからまってろ」と言うと、迷いなく下に落ちた。木々が頬にあたっては軽く傷ができる。
「お前ェ、随分とやんちゃするようになったじゃねェかァ」
「………へへ、……姉ちゃんにコレ……あげたくって……」
俺に寄りかかる隼人の手には赤いゼラニウム。
確か花言葉は「君ありて幸せ」だっか。隼人を抱えて上に登れば、すっかりと疲れ果てて寝ている隼人を風門が泣きながら抱きしめた。
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呑子(プロフ) - 2話のひなき様がひなぎ様になってます (2020年6月11日 21時) (レス) id: b937ad49b1 (このIDを非表示/違反報告)
菜一郎(プロフ) - きゃああああ名前で呼んで欲しいってとこ可愛すぎぃぃいいいい (2020年5月29日 17時) (レス) id: 2c549b1da3 (このIDを非表示/違反報告)
鏡花(プロフ) - ぐはっ!告白ぅぅぅ!!尊い!!!死ぬ!!!! (2020年5月25日 23時) (レス) id: c8a359bcaf (このIDを非表示/違反報告)
Ø(プロフ) - こんなに素敵な小説に出会えてよかったです!大変かもしれないですが無理せずがんばってください!応援させていただきます!! (2020年5月21日 0時) (レス) id: 712c3e0bb6 (このIDを非表示/違反報告)
ハチハチ1129(プロフ) - 美桜さんの作品最高です!私も逮捕されたい、補導されたいと思いました(*^ω^*) (2020年5月19日 6時) (レス) id: 12ce184d67 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:美桜 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ririsa10713/
作成日時:2020年5月16日 13時