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「あ、あの、と、とりあえず、ひ、ひ、一人でな、中に入ってに、に、に、荷物まとめてくるんで、外で待っててください」
「どもりすぎだろォ。何かあったら叫べェ」
「あ、いや、さすがに昼間なので叫びは」
それではと敬礼し、家のドノブニ手をかけた。多分、父は今家にいるはずだ。どう反応するか怖いけれど、一緒にいたいという実弥さんのそばにいたかった。
家の中に入り、自分の部屋に入る。キャリーケースに大事なものを一通り入れてファスナーをしっかりと締める。入り口付近に置いて、リビングに向かう。
そこには父がいて、また酒を片手に持っていた。
「お父さん、」そう呼ぶと彼はこっちを振り向いた。
私のむき出しになっている腕を見て、少し顔が強張る。そりゃーそうか。力は振るうものの、こんな火傷なんてしたことなかったし。それが父のせいだと思えば、もともと優しかった父には少し衝撃が強い、か。
肩から下げているショルダーバッグの紐を握りしめて、「もうお父さんとは一緒にいられない」と口を開く。そうすれば目を見開いた父が私を写した。
「家を出て行くつもりか?」
「…………うん」
「…………勝手にしろ。お前なんかもう知らん」
あっさりとした父の言葉になんの言葉も出てこなかった。酒を飲んでいるし、暴れるなんじゃないかと覚悟していたけれど。そっか、家を出て行くことすらなんとも思わないぐらい娘の私のことと大切じゃないんだ。
「………お父さんにとって私はなに?私のこと、……好き?」
「………ーーー嫌いだ」
「………そっか、」
わかった、そう言って泣きそうになりながらも背中を向けた。泣いたらダメだと何度も自分に言い聞かせ、荷物を持つと玄関から外に出た。
外で待っている彼に、にへらと笑う。
笑顔なんて程遠い笑み。実弥さんは私を私の荷物を持つと手を握って歩き出した。近くに止めていた車に荷物をいれる。駐車場に誰もいないことを確認すると、実弥さんは腕を広げて「泣いてろ」と言う。
誰もいない二人きりの駐車場で私の鳴き声が小さく響いた。
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カオリ - 素敵すぎました!!涙なしでは読めない、素敵な作品に出会えました。 (2023年4月29日 4時) (レス) @page50 id: 836efc3cce (このIDを非表示/違反報告)
楚依 - この神作を書いて頂いてありがとうございました!!!本当に何周も読んで、何周もキュンキュンしたり感動したり、本当に今まで読んできた作品の中で一番です!夢主ちゃんと実弥さんの絡み大好き過ぎます…改めて、こんな素敵な素敵な作品、ありがとうございました!! (2022年12月23日 23時) (レス) @page50 id: 2128c14dbd (このIDを非表示/違反報告)
楚依 - 本当に最高でした。何周したのか…師範大好きです。 (2022年12月23日 23時) (レス) @page50 id: 2128c14dbd (このIDを非表示/違反報告)
むちょ - 尊み(´ω`) ハッピーエンドで心温まりました。 (2022年12月5日 19時) (レス) @page50 id: afeec74a39 (このIDを非表示/違反報告)
ドク(プロフ) - お゛っあ゛…神様…尊みでひとりの人間が供給過多で死にました神作品マジでありがとうございます幸せっす本当ありがとうございますっ!!! (2022年5月29日 16時) (レス) @page47 id: f0778d3186 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:美桜 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ririsa10713/
作成日時:2020年3月7日 13時