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溢れ出した涙に、思わず腕で目を拭う。そうすれば、「腫れるだろ!」と両腕を掴まれて、身動きを取られなくされてしまった。実弥さんの指が優しく私の目の下をなぞった。
優しく撫でられる頭に我慢の糸が切れた。
昔と変わらず露出された胸に飛び込んで思いっきり声をあげて泣く。会いたかったのは私も同じだ。12歳で前世の記憶を思い出し、苦しかった私の日常をいつかきっと誰かが助けてくれるって期待していた。
「落ち着いたかァ」
「………はい」
買ってもらった水をたくさん口に含み、息を深く吐く。何か話さなきゃと思うばかりで、口からは何も言葉が出てこなかった。こうして二人並んで話が出来るなんてどれほど夢みたことだろう。
チラリと隣を伺えば、すぐに目があった。ずっと私を見つめていた証拠だろう。恥ずかしくなりながらも、見つめ返せば、実弥さんは「お前、今世じゃ風見Aなんだってなァ?」と問いかける。
「あ、はい。そうです」
「そうかァ。家族はどうだァ?」
ビクリと反応した私をきっと彼は見逃してはいないだろう。「……前世の家族じゃない」と呟く。やだなぁ、できたらこの話は避けておきたかった。けど、避けるに避けられない。
「A、てめぇ………今幸せか?」
「っ、」
家に居場所がない。
父からつけられる無数の傷。トモダチと呼べる友人すらいない。そんな私はきっと「不幸せ」。
「幸せですよ、………すっごく」
幸せな今を過ごす貴方に迷惑をかけたくない。
玄弥さんや家族との幸せを今世で漸く手に入れたんだ。心配させるわけにはいかない。
「なァ、時々会えねぇかァ」
「…………!!」
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カオリ - 素敵すぎました!!涙なしでは読めない、素敵な作品に出会えました。 (2023年4月29日 4時) (レス) @page50 id: 836efc3cce (このIDを非表示/違反報告)
楚依 - この神作を書いて頂いてありがとうございました!!!本当に何周も読んで、何周もキュンキュンしたり感動したり、本当に今まで読んできた作品の中で一番です!夢主ちゃんと実弥さんの絡み大好き過ぎます…改めて、こんな素敵な素敵な作品、ありがとうございました!! (2022年12月23日 23時) (レス) @page50 id: 2128c14dbd (このIDを非表示/違反報告)
楚依 - 本当に最高でした。何周したのか…師範大好きです。 (2022年12月23日 23時) (レス) @page50 id: 2128c14dbd (このIDを非表示/違反報告)
むちょ - 尊み(´ω`) ハッピーエンドで心温まりました。 (2022年12月5日 19時) (レス) @page50 id: afeec74a39 (このIDを非表示/違反報告)
ドク(プロフ) - お゛っあ゛…神様…尊みでひとりの人間が供給過多で死にました神作品マジでありがとうございます幸せっす本当ありがとうございますっ!!! (2022年5月29日 16時) (レス) @page47 id: f0778d3186 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:美桜 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ririsa10713/
作成日時:2020年3月7日 13時