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Aの口から父親の話が出たことは一度もなかった。だが、母親である水瀬さんの薬指には指輪がいつもついていた。ただAが父親の存在を知らないだけかと思っていたから本人に聞くこともなかった。
しかし、そんな過去があって、水瀬さんがAを連れて五条家に来たとは初知りだった。あの親父でも人を助けて援助まですんのか、と暫し関心した。
「悟くん、」
「Aは何も悪くねぇから。もう泣くな」
強く引いて抱きしめた。
Aはヒック、と小さくしゃくり上げながら泣いていた。あやす様に背中を摩り「悪ぃのは呪霊だ」とボヤいた。Aの耳には届かない程度の小さな声で。
ずっと抱きしめたままでいると、Aの手が俺の背に回された。それは初めてのことで。俺自身も戸惑った。抱き寄せることはよくしていたが、それに応えるように腕を回されたことは今までになかった。
「私ね、二宮くんに好きだって言われたの」
「は?」
突然の告白に、ガバッとAを引き剥がす。
あのクソ野郎、やっぱAのこと好きだったのかよ。脳裏にアイツを浮かべては、赫を放つ妄想をした。
「で、なんて答えたんだよAは」
「………うん、二宮くんに"私のこと綺麗か可愛いかどっちだと思う?"って聞いたら"綺麗"って言ってくれた」
「ハッ、見る目ねぇな。どこが綺麗なんだよ。俺ほどにならねぇとAの可愛さにも気づけねぇのな、パンピーはよ」
つらつらと並べる二宮への悪口。
Aはハハッと笑うと「だから、ごめんなさいって断ったの」と答えた。その言葉にAを見ると、ポロリとまた泣き始める。
昔はこの顔を見たくて、いじめていた時期があった。けど、今はみたくない。目尻に浮かぶ涙を指で掬う。
Aが俺の服を掴んだ。
俺に触れて良いのは、Aだけ。だから、Aが触れてくる時以外は触れられないように、無化限を張っていた。
「悟くん、私………悟くんの使用人、辞めたい」
「………は?」
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沙羅(プロフ) - お疲れ様でした!完結おめでとうございます(^ω^)長い間読ませていただきました。番外編楽しみにしてます!甘々な展開、期待しております! (2021年4月19日 22時) (レス) id: f64d60a5d5 (このIDを非表示/違反報告)
踊る宝石(プロフ) - はじめまして!本当にこの作品大好きです。番外編がこれから少しあるんですかね?更新楽しみにしてます! (2021年4月19日 1時) (レス) id: 7183f6d526 (このIDを非表示/違反報告)
プスメラウィッチ - 美桜さん初めまして、この小説は五条悟オチですか?できれば五条悟オチでお願い出来ますか?続き頑張って下さい。応援してます。 (2021年4月14日 21時) (レス) id: 8685377221 (このIDを非表示/違反報告)
飼口(かいぐち)(プロフ) - 一人称が僕になってる…!てことは夏油はこのときにはもう…? (2021年4月13日 21時) (レス) id: 57441fdd79 (このIDを非表示/違反報告)
プスメラウィッチ - 美波さん初めまして、この小説は五条悟オチですか?できれば五条悟でお願い出来ますか?続き頑張って下さい。応援してます。楽しみにしてます。 (2021年4月6日 18時) (レス) id: 8685377221 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:美桜 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ririsa10713/
作成日時:2021年4月4日 19時