好きな子に呪いをかけた件について【狗巻棘】

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「あの様子だと
信じてないだろうし
棘がかけた呪いのことも
理解してないだろうね」




夜は危ないから送っていく
と言ったが、彼女は頑なに
首を縦に振らず
一人帰って行った。



虚しさに
床をゲシッと蹴った。




「棘、いたいた。
はい、あの子の忘れ物」

「しゃけ」

「そうそう、中におかしなもの
入ってるんだ。勝手にレディーの
私物覗くのは悪いから君、覗いてよ」



ポーチの中を開きてみると、
口紅やファンデーションと
言った化粧道具と、なにか紙切れが
出てきた。



「こんぶ」

「お祓いの札だね。
普段気にしていないって言ってたけど
なんだかんだ気にしてたっぽいね」




届けてあげなよ
と口角をあげる五条先生に、
しゃけと呟くとAの後を追って
走った。



高専を出て、
電車に乗って。




「(………おかか)」




そして。



……Aの家がどこなのか
わからなかった。



届けるには住所がないと
家の場所もわからない。


大学も聞いてないし、
何一つわからない状態で

どこにいるAに届けようとしていたのか。




スマホを片手に、
Aに電話をかけようとしたとき。



先にかかってきた電話の
相手は彼女だった。



すぐに電話に出て
「すじこ、ツナツナ」と言葉にすれば
息切れの音が聞こえて来る。




「………た、助けて！」



恐怖の混じった声で
居場所を教えて来る。



何があったのか
そう口を開く前に電話の向こうのAが
涙混じりの声で叫んだ。




「お願い、棘」

「……！」




「助けて」




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