好きな子に呪いをかけた件について【狗巻棘】

28 ページ30

*






先輩が何かを言おうとした。


だけど、
視線の先に棘を見つけた私は
先輩の隣から離れた。



壁に身を潜めては、
顔をひょっこり出して
まるで誰かを探しているようだ。




「棘、何してるの？」

「いくら」



ギョッと驚いた棘は
今は中学生。



私よりも幾分か背丈が小さい彼は
私を見上げて顔を赤くする。



ちょうど帰りに遊びに行こうと
思ってたの。

なんて言えば、彼は嬉しそうに
「高菜ぁ！」と声をあげる。




それに笑っていれば
「神楽、」と先輩に呼ばれた。



ちょっと待っててね、と
先輩の元に戻ってさっきの会話を
再開させる。




「神楽は、あの子のことが
好きなのか？」

「………好きですよ」

「なんでよりにもよって、
あんな年下なんだ？」




わかってる。
二つ上の私のことを棘が
お姉さんのように思っていることなんて。



このままの関係でずっといい。




「先輩は知らなくていいです。
棘の優しさも、かっこよさも」

「………！」




背を向けて帰っていった先輩。

棘のところに戻ると
不満そうに先輩の背中を見つめていた棘。




「あの人は部活の先輩だよ」




ただの興味本位なんて
本当は嘘。




「棘は学校に可愛い女の子とかいないの？」




いないって聞きたかった。




「棘に好かれた女の子はきっと幸せだよ。
私も幸せになりたいなぁ」




棘に、お姉さんではなくて
一人の女の子として見て欲しかった。



伝わらないってわかってるの。
だから、私だけが想っているだけでいい。



下を俯く棘を心配して
顔を覗き込む。



彼はいつもしているマスクを
下にズラして私の目を見た。




「ーーー俺を"_______"になってよ」




.

29→←27