47 ページ47
*
小さく手を振るった先で、満面の笑みを浮かべる女の子が同じように手を振るった。
「またね、啓悟」
隣にいる彼女の父親を見上げれば「名前教えたのか？！」と俺の背丈に合わせて屈んだ。頷いて「ダメだった?」と聞き返すと、彼は「まあ俺の娘だからいっか！」と笑う。
「年は二つAの方が下で女の子だけど、同世代の子と遊ぶのも良いだろ？」
「うん。この人の話で盛り上がった」
両手で彼に見せつけるように抱えたエンデヴァーを見つめる。改めて「訓練頑張ります」と呟く。
1週間に一回、多くて2〜3回、彼はAを連れてきてくれた。その日は訓練が休みになるけど、会えるのが嬉しかった。
「お父さん、お父さん、啓悟が私のこと落としたぁぁあ！！！」
「だって、Aちゃんが暴れるけん。それに重かった」
「酷い！！」
「まあまあ」と俺たちの仲に入る彼をみて、父親というのはこういう人なんだろうと自分の父親を思い出す。
公園で遊んでいると、不意にAが立ち止まった。俺たちよりもまだ小さな子供が母親に抱っこされている姿をみて、スカートの裾を握りしめていた。
「どうしたのAちゃん」
「……ううん、なんでもない。見てみて、私もお父さんにオールマイトのぬいぐるみ買ってもらったの！」
さっきまで泣きそうな顔で知らない人の"お母さん"を見つめていたのに。
ひだまりの中、漆畑さんの膝の上で寝てしまったA。その隣に座り、空をぼーっと見上げて「Aちゃんってお母さんの話は全然せんけど、なんで？」とぽつりと質問を落とす。
「結構ストレートに聞いてきたね、啓悟くん」
「うん、気になったから」
「………うーん、そうだね。Aのお母さん、ずいぶんと前に亡くなってるんだよ」
「え？」
親とは到底呼べない両親を持っていた俺と、母親をヴィランに殺され片親のA。手を伸ばしてAの頭を撫でた。
「俺のせいで、Aには母親のいない寂しい思いをさせてる。俺もあまり家に帰れないからおばあちゃんにほとんど面倒を見てもらってるんだ」
「けど、Aちゃん、漆畑さんのこと大好きって言ってた」
「はは、そう思ってくれてたら嬉しいな」
それに、愛情があるからAはあんなにも素直に育ったんだ。「……俺も漆畑さん好きだから」と小さく呟いた。
「じゃあ俺の子になるか？！」
「それはいい。Aちゃんと結婚できん」
「……ん？」
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 574人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
浦玖珂 咲希(プロフ) - すやすや眠る夢主ちゃんの横で永遠に焼き鳥の数を唱えてるの想像したらシュール過ぎておもろい (2023年3月23日 23時) (
レス) @page32 id: e9e20e1e7a (このIDを非表示/違反報告)
浦玖珂 咲希(プロフ) - みんな本家通りの性格してるのに面白すぎる、最高過ぎる！！！ (2023年3月21日 3時) (レス) @page25 id: e9e20e1e7a (このIDを非表示/違反報告)
真白 - 微笑ましい〜！ (2023年3月13日 13時) (レス) @page6 id: 1bd364c53c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：美桜
| 作成日時：2023年3月12日 17時
