手を繋ごうよ【黒川イザナ】

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「今日は真一郎もイザナもエマもいない」

「……………」

「いるのはイザナの女だけ」

「イザナの女じゃないけど」



一対一。マイキーくんと向かい合わせで座るリビングのテーブル。たい焼きを「スイスイ〜」と動かしながらマイキーくんは暇そうにしていた。こうしてみると、可愛い中学生だ。



「けんちんはエマとデートだし」

「けんちん？」

「エマの好きなやつ、あとエマのことが好きなけんちん」

「両想いじゃん」

「そ」



場地は千冬とどっか行ってるしなーとパクパクたい焼きを食べ始める彼にはたくさんのお友達がいるようだ。遊び相手がいないのが不服なのか、彼はたい焼きを食べ終えると携帯でいろんな人に声をかけ始める。けれど、誰一人として捕まらないようだ。



「イザナは天竺メンバーとチーム潰しに行ってるし、俺も東卍連れて一緒に行けば良かった」

「マイキーくんもチーム作ってるの?」

「うん、東京卍會。俺そこの総長」



イザナも天竺の総長。確か真一郎くんも昔はどっかの総長やってたって。この兄弟もしかしてすごい人たち？


マイキーくんは「あっ♡」と私を見て手を取った。「バブの後ろ乗せてあげる」と強引に部屋から連れ出した。イザナ以外のバイクに乗るのは何気に初めてで戸惑っていると「ハジメテ頂き♡」とマイキーくんはにししと笑う。

別に初めてじゃないのは言わないでおこう。



「ガキの無免許運転のくせに」

「喧嘩売ってんの?買うよ？」

「すみません。後ろ失礼します」



どこに行くんだろうと思いながら後ろでマイキーくんに落ちないように掴まること数十分。バキッ、ドコッ、いろんな効果音が響き渡る。赤褐色の特攻服というものに身を包む人間が数人、他の特効服を着る人間を殴っては蹴って、地面に転がしている。



「…………私、マイキーくんは海とか公園に連れて行ってくれるもんだと思ってた」

「俺にとってここがデートスポットだしぃ」



苦手な音に耳を塞ぎたくなる。



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