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手を離してくれて、思いっきり咳き込む。首を絞められたことなんてなかった。首に手を当てて、イザナを見やればまた手が伸びてくる。そう思った時、イザナは私の後頭部に手を回して優しく引き寄せた。
コツンとイザナの肩に当たる額。背中をぽんと優しく叩いた彼が「俺も死にたくなったことぐらいある」と言った。
「俺は、真一郎やマイキーたちと血がつながってない」
「………え……?」
「施設に預けられる前一緒に暮らしてたエマともな」
それを知った時、イザナは心底絶望したと教えてくれた。あんなにも仲がいい兄妹。血の繋がりがあると信じていたはずの三人と血が繋がっていないと知った時の彼の気持ちを私には計り知れない。
けれど、真一郎くんやマイキーくん、エマちゃんはイザナを受け入れてくれた。未だに家族という領域に慣れずにいることもあるらしい彼。
「……とにかく、今は何も考えず泣いとけ」
「…………っ」
「下.僕に俺の肩貸してやるんだ、ありがたく思え」
思いっきり泣き叫ぶ。
イザナはまるで小さな子供をあやすように何度も背中を叩いてくれた。何分、何十分、どれぐらい泣いたんだろう。
気持ちが落ち着いてきた時、イザナは「A」と私の名前を呼ぶ。肩に押し付けられていた顔を離し、イザナに視線を向けると彼は「これで正真正銘、」と話し始める。
「お前は俺のモノだ」
「……………」
その言葉を聞いて喜ぶ人間はあまりいないだろう。
昔からカクちゃんや私を下僕扱いしていた彼。普通ならば引いて呆れるところなのに、私はその言葉にどこかホッとし、喜んでいた。
「俺のいねぇところでくたばるなよ。もしも仮にくたばってでもみろ、地獄のそこまで追いかけててめぇを殺してやる」
「…………何その言葉」
イザナらしくて笑えてくる。
「お前を生かすも殺すも俺が決める。だから勝手に死ぬな」
そう言ってイザナは立ち上がった。お互い下半身がびしょ濡れで不恰好なのに、イザナがキラキラとして見える。私へと手を伸ばす彼は「帰るぞ、家に」と初めて微笑んだ。
「(…………銀色、)」
全てが鈍色で、色のない世界に独りぼっち。寂しかったはずなのに。
「色が、……ついた」
「あ?何言ってんだ」
小さい頃とは違った頼り甲斐のある大きな手に触れれば、イザナは離さないように、ぎゅっと繋いだ。
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頭ン中お花畑(プロフ) - とっても甘々で最高でした。ニマニマが止まらないし、本当に胸がキュンキュンするーっ! 最高のイザナ夢をありがとうございました。寿命が伸びた気がします (1月7日 23時) (レス) id: 67d18bea8c (このIDを非表示/違反報告)
ちえ - 天竺編10月始まる楽しみ今からイザナ見るの待ちきれらない (6月21日 0時) (レス) id: 67f766a775 (このIDを非表示/違反報告)
ちえ - イザナの名言天竺編で見れるの楽しみです。 (6月12日 1時) (レス) id: 67f766a775 (このIDを非表示/違反報告)
桜華 - ↓ごめんなさい 間違えました (5月15日 22時) (レス) id: c0d0824301 (このIDを非表示/違反報告)
桜華 - あ (5月15日 22時) (レス) id: c0d0824301 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:美桜 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ririsa10713/
作成日時:2022年11月13日 16時