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「イザナ」
化粧水を忘れていて、エマちゃんに借りた。
スキンケアを終えて、ベッドに横になっているイザナを呼べば視線だけこちらへと向ける。
終わったか?とアイコンタクトを取られて「終わった」と口にすると、手招きされる。彼の前に行くとイザナは私の手を引いてベッドに膝をつかせた。
「何か言うことあんだろ」
「………ありがとう、助けてくれて」
「ん」
相変わらずだね。
イザナは無表情のまま私をベッドの中に引き摺り込む。いや、この展開、私は知っている。レイと同じだ。そう思っていると、「イザナぁ!!!」と扉を開ける音。弟くんが帰ってきたらしい。
心底迷惑そうな顔をするイザナ。そして目を輝かせる弟くん。「さっさと寝ろよマイキー」と言っては弟……マイキーくんを外に追い出していた。
「…………賑やかだね」
「まあな。暇はしねぇ」
「良かったね、いい家族ができて」
「…………」
イザナは私の言葉に黙るとまたベッドの中に潜って行く。「ん」と横を空けている彼に「一緒には寝ない」と答える。
エマちゃんに頼んで布団を用意してもらおうかな、と思っていると「誰もてめぇに手なんか出さねーよ」と無理やりベッドに引き摺り込まれた。それはそれでなんかチクリと胸が痛む。
「昔よく添い寝してやっただろ」
「カクちゃんと三人でよく寝てた」
「黙って寝ろ」
添い寝って言って手を出してくる奴しか知らなかった。けれど、イザナは私の背中に腕を回しポンと叩くと目を閉じて眠りにつく。
いつぶりだろう、何の恐怖も不安も感じずに熟睡できた夜は。イザナの腕の中が暖かくて心地よい。無意識のうちにイザナの胸に顔を擦り寄せていた。
「イザナ………」
「………………」
「…………本当はずっと会いたかった」
本音を呟いて顔を上げる。寝ているイザナに今だけ素直な気持ちを口にする。お父さんに手を初めて上げられたあの日からずっと助けて欲しかった。会いたかった。
「ねぇ、起きてる?……起きてるわけないか」
「(………起きてる)」
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頭ン中お花畑(プロフ) - とっても甘々で最高でした。ニマニマが止まらないし、本当に胸がキュンキュンするーっ! 最高のイザナ夢をありがとうございました。寿命が伸びた気がします (1月7日 23時) (レス) id: 67d18bea8c (このIDを非表示/違反報告)
ちえ - 天竺編10月始まる楽しみ今からイザナ見るの待ちきれらない (6月21日 0時) (レス) id: 67f766a775 (このIDを非表示/違反報告)
ちえ - イザナの名言天竺編で見れるの楽しみです。 (6月12日 1時) (レス) id: 67f766a775 (このIDを非表示/違反報告)
桜華 - ↓ごめんなさい 間違えました (5月15日 22時) (レス) id: c0d0824301 (このIDを非表示/違反報告)
桜華 - あ (5月15日 22時) (レス) id: c0d0824301 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:美桜 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ririsa10713/
作成日時:2022年11月13日 16時