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両親に取引のことを伝えた。
一緒に乗り込んだ車の中で今日の取引のことを教えてくれる彼は「失敗すればお前殺されるぞ」と言った。一度停まった車、彼がトイレにいった隙に親に連絡を入れた。
もう無理だって、助けてほしいって。
「………死にたく、ないっ」
『何言ってるの。私たちのためだと思いなさい』
「………やだよ……なんで……こんなこと、」
『それがあなたの運命だから仕方ないじゃない』
あぁもうダメだって思った。両親はこうして弟のことも見捨てたんだろうか。そう思えて涙が出てきた。
彼と取引場所について、部屋に通される。よく似た二人だ。なんだか見覚えあるなと思った。けれどわからない。私には18歳までの記憶が飛んでしまっているから。
彼らが一度席を立った時、「帰らせてください」と申し出た。そうすれば平手打ちが飛んでくる。痛かった。ものすごく痛かった。何度も打たれているのに、未だに痛みに慣れない。
無理やり背中を押されて灰谷と呼ばれる男の人の腕の中に収まった。体を支えられて、用意されたホテルの部屋まで連れ込まれる。
すぐに終わらせよう。いつも一瞬で終わるじゃないか。いやなことも汚いこともすぐに終わられば、男の人たちは皆すぐに帰って一人で泣けるじゃないか。
身に纏っていた服を全部脱ぎ払って、下着姿になれば後は男の人の体に体を擦り寄せてそれで目を瞑れば一瞬だ。
そう思っていたのに、彼は体を引き離して、ベッドに押し倒すところかガウンを着させた。「身体、大事にしろ」そう言って灰谷さんは呼んだの。
「A」
私の名前を。
顔を上げれば思わず涙が溢れ出てきた。なんで泣いてるのかわからない。けれど、彼に名前を呼ばれた時嬉しくなった。知らないはずなのに、懐かしさを覚えている。
「一つ聞いていいか」
「…………は、はい」
「俺のこと覚えてねぇか?」
彼は自分の名前を「灰谷竜胆」と口にして教えてくれた。わからなかった。けれど、高校の時、なぜか本の栞には竜胆の押し花を使っていたことを思い出す。
「………ごめんなさい、私18までの記憶が曖昧で」
「…………」
彼はキリッと上がっていた眉を下げて「そっか」と呟いた。
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ゆ(プロフ) - 完結おめでとうございます。そっと竜胆くんたちを見守らせていただいておりました。番外編もありがとうございました!とても癒されました。次回作も楽しみにお待ちしてます! (2022年1月10日 18時) (レス) @page46 id: 1f3bc36824 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - 完結おめでとうございます!そして素敵な作品ありがとうございます!やっぱ美桜さんの作品好きすぎる、、、次回も楽しみにしてます! (2022年1月10日 11時) (レス) @page46 id: 5a0c9ff92a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:美桜 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ririsa10713/
作成日時:2021年12月25日 13時