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若い頃は竜胆の困る顔を見るのが好きでよく酷いことをした。まあ今でもよくしているけれど。
昔から顔は良かったし、この性格だからか女が好んで寄ってくる。竜胆に寄って来ていた女たちも、結局は俺のところに擦り寄っては「蘭ちゃんの方が好き」と言っていた。
竜胆は俺の可愛い弟だし、変な虫でもついたら困るから、俺はよく竜胆が気に入った女の子に声をかけては試していた。
だから、高校の時だってそうだった。
竜胆の機嫌がいつにも増して良かった日、女でも抱いたの?と聞けば「う、うるせぇ!」と言うもんだから。尻軽女じゃないだろうかとカマをかけに行った。
別にいたって普通の女だ。派手でもなく綺麗でもなく、けど竜胆が好きになりそうな女だなと思った。
いつものように女が喜びそうなことをしてみるも、体を引かれて、俺を引いたような目で見る。ここは合格だな、と思って竜胆の話を振った。
すぐに顔を赤くしたAちゃんに、竜胆はやっと良い女を好きになったんだなと兄貴ながらしみじみと泣きそうになった。嘘だけど。
けど、タイミングが悪かった。
偶然にも教室にやってきた竜胆は「すっごく好き」と言ったAちゃんのその言葉が俺に向けられたものだと勘違いをした。
何も知らないで彼女に傷つく言葉を投げかける竜胆が学校を出て行き、追いかけて行って事情を説明すれば掴み合いの喧嘩になった。
人生で一番後悔していると言ったら多分このことだろう。大事な弟にこんな想いをさせてしまったのだから。
『竜胆くん!!』
走ってくるAちゃんが青信号にも関わらず道路を横断した。それにいち早く気づいた竜胆ですらどうにも出来なかった。
バイクに撥ねられた。
喧嘩や抗争で敵対チームに酷いことをやってきた俺たちが言うのもアレだが、その時はやけに体温が下がって行った。
あれから数日して学校に戻ってきたAちゃんは記憶を失っており、高校の友達やましてや好きだった竜胆のことすら覚えていなかった。
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ゆ(プロフ) - 完結おめでとうございます。そっと竜胆くんたちを見守らせていただいておりました。番外編もありがとうございました!とても癒されました。次回作も楽しみにお待ちしてます! (2022年1月10日 18時) (レス) @page46 id: 1f3bc36824 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - 完結おめでとうございます!そして素敵な作品ありがとうございます!やっぱ美桜さんの作品好きすぎる、、、次回も楽しみにしてます! (2022年1月10日 11時) (レス) @page46 id: 5a0c9ff92a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:美桜 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ririsa10713/
作成日時:2021年12月25日 13時