37 ページ37
*
Aと別れて一週間が経つ。あの日から連絡が全く取れなかった。そんな俺に兄貴は、「裏切り者だから忘れろ」と何度も言った。
「お前の知ってるAちゃんじゃなかっただけだろ。12年も経ってんだ」
「AはAだよ。笑い方も泣き方も、優しさも全部。……兄貴知らないだろ、Aのこと何にも……」
二人きりだった部屋。
隣に座る兄貴を見ずにソファーから立ち上がる。
部屋を出て、スマホでAに電話をかけるも「電源が入っていない」と無機質な音声しか聞こえてこない。こっちに戻ってくる際にAの妹と連絡先を交換していて、彼女に聞いてみようかと思ったが無駄に心配をかけさせる訳にもいかなった。Aが守ろうとしている大切なものだから尚更だ。
それからまた数日経ったある日。
一本の電話がかかってきた。公衆電話からかけてきたのは誰でもない彼女だ。
「今まで何してたんだよ」
「ごめんね、ちょっといろいろあって……。あの、三日後に会えないかな」
「うん、いいよ。どこに行けば良い?」
「ーーー深夜3時、________に」
昼間ではなく夜中を指定してきたことに違和感を感じる。外回りから戻ってきた兄貴が俺のスマホを見て「なに、Aちゃんから?」と聞いてくるから無視しようとすれば「無視は肯定ってとっとくな〜」と確信をつかれた。
「竜胆、相手は公安警察。嵌められんの覚悟して、しっかり装備していけよ」
「……………あァ、わかってる」
「俺、梵天の幹部の前にお前の兄貴だから。何があってもお前の味方だってこと忘れんなよ〜」
「は、どういう意味?」
「さあ、俺もわかんね〜」
ケラケラと笑いながら隣を通り過ぎる兄貴。意味深な言葉が脳をゆらゆらと木霊していく。
何も信じず、惚れた女を泣かせたあの頃とは立場も歳も違う。覚悟、しなくてはならない。どっちに転ぶかはわからないけれど、惚れた女を殺す覚悟をしなくてはならない。
.
666人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「東京リベンジャーズ」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆ(プロフ) - 完結おめでとうございます。そっと竜胆くんたちを見守らせていただいておりました。番外編もありがとうございました!とても癒されました。次回作も楽しみにお待ちしてます! (2022年1月10日 18時) (レス) @page46 id: 1f3bc36824 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - 完結おめでとうございます!そして素敵な作品ありがとうございます!やっぱ美桜さんの作品好きすぎる、、、次回も楽しみにしてます! (2022年1月10日 11時) (レス) @page46 id: 5a0c9ff92a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:美桜 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ririsa10713/
作成日時:2021年12月25日 13時