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1年前、妙な男がいた。
どこか幼さを残す青年は俺の下についていた。仕事には忠実に従うが、殺しには決して手を染めない、反社には向かない男だった。
しかし、その男が警察内部のものだと分かった時、三途や俺、兄貴の三人で始末することになった。「竜胆さん!」とまるで兄のように俺の後をついてきていたソイツだったから、裏切り者とわかった時は少なからずショックが芽生えた。
「言い残すことはあるかァ?」
三途の言葉に意識を失いかけていた男は俺を見上げた。もう「竜胆さん!」と呼ぶ気力はないらしい。
コイツがいつも「竜胆さん」と俺を呼んでた時の顔は、少しAに似ていて男だが可愛いと思っていた。長年、兄貴の弟として生きてきたから、コイツが弟のように思えて可愛がっていたつもりだった。
「………りん、ど……さん、」
「灰谷弟、お前に言いてぇことあんだってよォ」
銃声が鳴り響く。
ビクッと反応したソイツが途切れ途切れに言葉を紡ごうとした。吐血してしまい、口の中は血塗れだろう。ゴフッと血と一緒に吐き出される息が見ていて苦しそうだった。
「…………姉ちゃんを、……助けて、ください……」
「………は?」
「…………きっと、いつか……あなたの前に、……現れる、」
最初は意味がわからなかった。
三途がソイツを撃ち殺した後、男の詳細を調べるも警察ということしか分からず本名も何もわからなかった。
ただ"姉ちゃん"。そう言っていた。
弟がいる女、なんてAしかいなかった。顔も少し似ていたからこそか、けれどAは俺との記憶もないし、それどころか今はすっかりと他人になってしまっている。
会うことなんてないだろうし、アイツが言ってたように俺の前に現れることなんてない、そう思っていた。
『………妻のAです』
そんな男のことも忘れた頃に、現れたのは傷だらけだった最愛の女だった。
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ゆ(プロフ) - 完結おめでとうございます。そっと竜胆くんたちを見守らせていただいておりました。番外編もありがとうございました!とても癒されました。次回作も楽しみにお待ちしてます! (2022年1月10日 18時) (レス) @page46 id: 1f3bc36824 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - 完結おめでとうございます!そして素敵な作品ありがとうございます!やっぱ美桜さんの作品好きすぎる、、、次回も楽しみにしてます! (2022年1月10日 11時) (レス) @page46 id: 5a0c9ff92a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:美桜 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ririsa10713/
作成日時:2021年12月25日 13時