25 ページ25
*
『情報を流すか、灰谷兄弟を殺せ』
頭の中にその言葉が何度も木霊する。
竜胆さんたちが住む高層マンションに帰り着くと竜胆さんが慌てて私のところにやってきた。
「お前……!部下が迎えに来るって言ったのに、いなかったろ?!」
「……ごめん、知り合いと会ってお茶してた」
「それならそうと連絡ぐらいしろよ。心配した」
必死な表情だ。
記憶を失くす前の私は竜胆さんのことが好きだった。そして今もだ。私のことを親以上に心配してくれる彼に、胸が温かくなった。
寒いだろ、紅茶飲む?と顔を覗き込んでは笑う竜胆さん。必死に笑顔を浮かべて頷くと彼は「よし、リビング行こ」と私の手を優しく握って歩き出す。
しかし、途中で力なくその場に膝をついてしまった。
無理だった。
情報を両親に流すことなんて出来ない。竜胆さんが好きだ。記憶がない私に、彼は無理やり思い出させようとはしなかった。いつも優しく笑ってくれてた。好きな人を売るような真似、私には出来ない。
公安警察として、私は彼らを逮捕しなきゃいけないのに。私は犯罪者の竜胆さんに恋をしている。
「どうした、A」
「………竜胆さん、」
「………は、泣いて……?え?」
足を曲げて屈み込んだ竜胆さんは目を見開いた。
どうすれば涙が止むのか知りたい。けれど多分その方法はきっとない。
手を伸ばして竜胆さんの顔を包み込んだ。膝をついて彼の顔に近づく。チュッとキスをすれば、彼は驚いたように固まって。
「A、何か思い出した?」
「わかんない。なのに、竜胆さんが好きってことだけはわかるの」
何もまだ思い出せない。
ただ彼のことがずっと好きで、自覚してしまうと止められなかった。彼に愛されたいのならば、警察でいる資格なんていらなかった。
「…………わかんねぇなら全部思い出させてあげる」
「……りん、どうさん、」
「好きだよ、12年前からずっと」
竜胆さんの唇が触れた。
.
666人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「東京リベンジャーズ」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆ(プロフ) - 完結おめでとうございます。そっと竜胆くんたちを見守らせていただいておりました。番外編もありがとうございました!とても癒されました。次回作も楽しみにお待ちしてます! (2022年1月10日 18時) (レス) @page46 id: 1f3bc36824 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - 完結おめでとうございます!そして素敵な作品ありがとうございます!やっぱ美桜さんの作品好きすぎる、、、次回も楽しみにしてます! (2022年1月10日 11時) (レス) @page46 id: 5a0c9ff92a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:美桜 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ririsa10713/
作成日時:2021年12月25日 13時