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「助けて、ください」
今まで沢山の「助けて」という言葉を聞いてきた。その中には女もいて、その声を俺はいつも無視していた。
目の前にいる女がどうでもいい女ならば無視してこの部屋を出て行くことだろう。そうしないのはどうでもいい女じゃないからだ。
『竜胆くん』
涙交じりの声で助けを請うAを抱きしめた。
ずっとこうして抱きしめたかった。Aが事故に遭い、俺のことを忘れて関わりを持てなくなってから今までずっと。
文化祭実行委員だなんてめんどくせぇことに立候補してまで掴んだ関わりを一瞬で崩した自分をいつも後悔していた。兄貴や他の連中に笑われてでも好きだった。
片手でスマホを取り出して兄貴に電話を繋げる。「どう竜胆〜」と呑気な兄貴の声が聞こえてくる。あの男の声も聞こえてきた。「ああ見えていい身体してるんですよ」の声。
「………兄貴」
「ん、兄ちゃんに頼み事か〜?」
「うん、目の前にいる男、今すぐーーー殺して」
「おっけ〜、任せろ」
その瞬間に電話とそして下の階から、発砲音が鳴り響いた。ビクッと体を揺らしたAの頭を撫でて「さすが兄貴。ありがとう」と伝えれば。
「…………俺さ、割と後悔してたんだよな〜。竜胆の困った顔見るの好きだったから今までカマかけてお前に寄ってくる女試してた。けど、Aちゃんが初めてだよ。俺のことドン引きして見てきたの」
残り片付けて下で待ってるなという兄貴に、頷いて電話を切った。一度彼女から体を離せば、俺のスーツを掴んだ。
「ど、どうして」と小さな声が部屋に響く。
「どうして助けて、くれたんですか」
「…………気に入ったからお前のこと」
なんていうのは嘘で。
あの男から解放してやりたかった。またAと出会えたから、今度こそ手に入れてやるそう決心した。俺のこと忘れたのならば、思い出せるように今度こそ努力するよ。
「もう怖くないよ」
スッと体の力が抜けたAはぐったりと俺の胸に体を預けた。安心感とともに気を失ったのか、眠りについたAの額に唇を寄せた。
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ゆ(プロフ) - 完結おめでとうございます。そっと竜胆くんたちを見守らせていただいておりました。番外編もありがとうございました!とても癒されました。次回作も楽しみにお待ちしてます! (2022年1月10日 18時) (レス) @page46 id: 1f3bc36824 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - 完結おめでとうございます!そして素敵な作品ありがとうございます!やっぱ美桜さんの作品好きすぎる、、、次回も楽しみにしてます! (2022年1月10日 11時) (レス) @page46 id: 5a0c9ff92a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:美桜 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ririsa10713/
作成日時:2021年12月25日 13時