モデルとデザイナー【三ツ谷隆】

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ーーー2016年。



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「すごい、綺麗」



隆が作ったそれはとても綺麗で着るのが楽しみになった。まだ新人デザイナーとして歴が短いが、その腕は皆が認めるものだ。



「おう。明日これ着てAが歩いてるの見るの楽しみだな」

「隆！おめでとう！」



日本で最も大きいファッションショー。それに初めて出ることが出来た彼は嬉しそうにしていた。私は自ら隆のデザインする服のモデルになることを宣言した。


採寸から何から何まで。自分を追い詰めて、5徹してた時はドラケンくんに頼んで物理的に眠らせた(※殴った)。それでも隆が自信を持って作り上げたそれは、今までたくさんの衣装を着てきた私でも綺麗だと思えた。



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綺麗に纏められた髪の毛。
鮮やかだけど控えめな化粧。ふわりと降ろされたレースが真っ白な肌によく馴染む。


ランウェイを歩く自分は、見に来てくれてる人たちにどう見えてるだろうか。今自分がここにいて、これを着てるなんて小学生の頃の私は想像もしてなかっただろうな。



「ねぇ、あのドレスのデザイナー、三ツ谷隆って……えっ、もしかして楠瀬Aちゃんの彼氏じゃない？何回か生放送で名前ボヤいてるじゃん」



ステージの裾で見ていた隆はいつも通りだった。
ステージの先、この後タキシードを着た別の男性モデルが来るのが確かこのファッションショーの醍醐味だったけ。


まるで本物の結婚式のようにしたいとかなんとか担当の人が言ってた。そのタキシード着てるのが隆ではなくて、男性モデルなんだから少し複雑だ。


手に持った大きな花束。
顔を傾けて笑えば、お客さんも笑顔になる。



「ーーーA」


　
聞き慣れた声に振り返るとそこには何故か隆がいた。
隆もこの後の流れは把握しているはずなのに、なんでここにいるんだ？？何か正気を失ったのか、一週間徹夜してたせいで頭が馬鹿になったの？？



「え、なんで？」

「いやァ、背中押されちまった。本当はこの後のデートで渡そうと思ってたんだけど、」

「？」



ステージの裾を見ればそこには関係者スタッフが覗き込んでいて、一人はグッと親指を上げていた。本当になんなんだ。お客さんまでも騒然とする中で、隆が膝をついてポケットから小さな箱を出す。



「楠瀬Aさん、俺と結婚してください」



その言葉に、会場内には叫び声が響いた。



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