モデルとデザイナー【三ツ谷隆】

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別に濡れただけなら我慢出来る。
隆が中学の入学時に作ってくれたカーディガンを引っ張られてそれが破れてしまったら私だって黙っちゃいない訳ですよ。


破れたカーディガンの裾を見て静かになる私を彼女らは盛大に笑った。そこで私の我慢の糸が切れた。



「あー笑った笑った」



ホースを投げられそれが顔に当たる。
こちらを一度も振り返らない彼女らに、私はスッと立ち上がった。こんなの屁でもない。………大丈夫だ。


教室に濡れたまま入れば、みんなが目を見開く。隆が椅子から立ち上がり、驚いているのが視線の端っこに見えた。


そのま歩いていけば辿り着くのはあの子の席。座ったまま「あれ〜、どうしたのびしょ濡れで」と笑う彼女に私はこれ以上になくいい笑顔を向けた。だけどそれも一瞬で終わる。笑顔を消した。



「ねぇ、自分が醜いって思わない？」



片手に持つのは水でも炭酸水でもない。
最近は健康のために青汁を飲み始めた。青緑の液体が彼女の頭を濡らした。床にポタポタと落ちていく青汁に教室内がざわめき立つ。


「ねぇ、今どんな気分？」

「アンタねぇ！！！！」



襟首掴まれて取っ組み合い。

ここで下手に手を出せばめんどくさいことになるので私は手を出さずに彼女をひたすら見つめていた。私の目に映る彼女は酷い顔だ。メイクは崩れ、顔には水ではなく青汁が垂れる。


私と彼女を止めたのは他の女子でも男子らでもなく隆だった。顔を叩かれそうになったのを彼が腕を掴んで止めた。その後先生がやってきて私たちは教室を移動した。

事情を正直に話す。今日の体育のことや普段のことを知っているクラスメイトの女の子たちも証言してくれた。


ーーーけど、



「楠瀬さん、貴方が目立つのが悪いのよ」

「…………はい？」



おおーっと隆、どうやら私をよく思ってないのはこの先生も同じなようです。体育のことや今までのこと、全部聞いてなかったのかなこの先生。クスクスと隣であの女子が笑うのが聞こえる。



「スカートの丈も短いし、色付きリップつけてるでしょ？」



色付きリップは完全なる誤解だ。
これは私の天然物だ。



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