記憶喪失少女、運ばれる。 ページ10
寂雷SIDE
「ふぅ……………」
胸に溜まっていた息を吐き出す。
今日はやけに患者が多かったため、あまり休む時間がなかった。
「お疲れ様でした、先生。今日はゆっくり休んでくださいね」
顔馴染みの看護師がカルテを片付けながら声をかけてきた。
『あぁ、そうさせてもらうよ。ありがとう』
看護師にお礼をし、診察室を出ようとしたその時、廊下からバタバタと数人の足音が聞こえてきた。
そして、無造作に診察室の扉が開かれた。
「寂雷さんッ!」
そこには、焦りの表情を浮かべた一郎君、二郎君、三郎君…
そして、三人に支えられている女の子がいた。
女の子には殴られたかのような外傷が何箇所か見受けられた。
「寂雷さん、お願いします、この子を…この子を診て下さい!」
一郎君が深々と頭を下げる。
「「俺ら/僕達からも、お願いします!!」」
それにならって二人も頭を下げた。
「落ち着いて、頭を上げて。とりあえずその子はそこのベッドに寝かせなさい。君、他の看護師を何人か呼んできてくれるかい?」
「わかりました」
看護師に指示を出し、彼女を診察室の簡易ベッドに寝かせた。
「あの、寂雷さん…」
「事情は後で聞くよ。先に傷の治療をしないと。とりあえず、外の待合室で待っていてくれるかい?」
「ありがとうございます」
三人は深々と頭を下げて、診察室を出ていった。
それと同時に駆けつけた数人の看護師とともに彼女の治療を開始する。
「呼吸は異常なさそうだね…失神か」
近くにいた看護師が紙に走り書きでメモしていく。
「先生、骨折箇所はなさそうです」
「ありがとう。とりあえず打撲痕を冷やして」
「はい」
「念の為、点滴ライン確保して」
「了解しました」
部屋の中で、数人の看護師が忙しそうに動き回る。
看護師が他の対応をしてる間、打撲痕を診る。
「殴られた…というか、打ちつけられた…という感じか………」
念の為頭部の傷を確認するが、目立った外傷は無かった。
「先生、応急処置終わりました」
「あぁ、ありがとう。とりあえず今日のところはうちに入院させるから、部屋に運んでくれるかい?」
看護師たちは了解しました、と言い、彼女を部屋まで運んでいった。
「さてと……」
私は診察室の扉を開け、不安げな表情を浮かべながら座る三人の元へ歩いていった。
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作者名:りりな | 作成日時:2019年1月4日 15時