14 杏寿郎side ページ14
杏「ただいま帰りました!」
千「兄上!おかえりなさい!」
玄関で、俺のことを迎え入れてくれる千寿郎。
千「。。。?兄上、なんだか浮かない顔をしていますね?」
どうしたんですか?と千寿郎に問われる。
よもや。
自覚がなかった。
弟に心配をかけるなど、兄として不甲斐なし。
杏「。。。いや!なんでもない!」
そう言い、俺は千寿郎の頭を撫でた。
家族で夕餉を囲んでいた時。
俺の頭の中にはAの姿があった。
折角、俺たちはこうして再び巡り合えたというのに、あのような事になってしまうだなんて。
ーーー私達は今日、初めてお会いしたはずですが?!
彼女のその言葉が脳裏をよぎった。
母「杏寿郎、箸が止まっていますよ」
ハッと我に返り、申し訳ありません、と、母上に告げようとしたが、その言葉は遮られた。
母「杏寿郎。1人で抱え込むのは、あなたの悪い癖です。困ったことがあったら、遠慮なく相談しなさい。それが家族というものです」
槇「話してみろ」
父上と、母上にそう促され、俺は重い口を開いた。
杏「。。。。。今日、勤務先に、Aが転入してきました」
そう言うと、母上は、手で口を覆い、父上は、お茶をふきだし、千寿郎は、持っていた箸を床に落とした。
俺たち家族には、全員、前世の記憶がある。
だからもちろん、Aのことも承知している。
杏「。。。。。でも、彼女には、前世の記憶がありませんでした。。。。。俺との約束も、何もかも全て、忘れていました」
ポタポタと千寿郎が俺の隣で涙を流す。
杏「。。。。。今はもう、あの時とは、時代も環境も違う。だったら、彼女に何も伝えずに、彼女のことをただただ見守るべきなのでは、と思いました」
そう言葉にはしたものの、それは本心では無かった。
−−−来世で。。。待ってて。。。
君のその言葉通り、俺は、この世に再び生を受けた時から、君を探していた。
君の容姿や雰囲気に似た女性を見る度に、堪らなく君に会いたくなった。
だから、今日、ようやく君を見つけた時に、長年の思いが叶ったのだと、嬉しさのあまり、泣き出しそうになった。
君と共に、今世こそは、幸せになりたい、添い遂げたいと思った。
俺の気持ちは、あの時からずっと変わっていないのだから。
でも、君は、あの時のことも、俺の事も、全て分からなくなっていた。
そんな君に、俺は、どうするべきなのか。
家族は、険しそうな顔をしたまま、何も言わなかった。
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りりむ(プロフ) - みんみさん» みんみさん、コメントありがとうございます!ついに煉獄さんが300億の男となりましたね!そんな煉獄さんの勢いに負けず、私もこの作品を素晴らしいものにできるように頑張ります!最後までお付き合いのほど、よろしくお願いいたします! (2020年12月14日 16時) (レス) id: b70c779254 (このIDを非表示/違反報告)
みんみ(プロフ) - 初めまして^ - ^いつも楽しみに見させてもらってます!切なくて尊いお話に感動しています!!無理せずに頑張ってください♪ (2020年12月6日 21時) (レス) id: 51bdc8dd02 (このIDを非表示/違反報告)
りりむ(プロフ) - 菫さん» 菫さん、コメントありがとうございます!この作品も、読者の皆様に感動とキュンキュンを与えられるような作品にしたいと思います!最後までお付き合いくださいますよう、よろしくお願いいたします! (2020年12月4日 12時) (レス) id: b70c779254 (このIDを非表示/違反報告)
菫(プロフ) - いつも楽しみにしてます!頑張って下さい(^^) (2020年12月2日 13時) (レス) id: 8bdaaad09a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りりむ | 作成日時:2020年12月2日 13時